『最後の相場師』津本陽



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アメリカのサブプライムローン低所得者向けの融資だそうですが、その問題で、世界経済が不安定な方向へ行っているようですね。アメリカでも日本でも、株価が急落し、景気全体にも影響しかねないとなると大変心配です。



上海やアメリカの景気はバブルだという声は以前からありましたが、やはり調整の局面に入ったのでしょう。日本は依然としてデフレから抜け出していないと言われるだけに、今回うまく軟着陸できると良いのですが…。





以前ご紹介した 『黒字亡国ー対米黒字が日本経済を殺す(三國陽夫)』 も現在、景気が良いとされる日本の経済構造の問題点を指摘した非常に興味深い一冊ですが、だからといって一般国民はどう行動すれば良いのかまでは書いていませんでした。



まぁ、経済構造、特にマネーの世界は、ヘッジファンドなどに代表されるように複雑になりすぎて、専門家でも経済予測や市場の動きを堂々と間違えるくらいです(笑)。ですから、まぁ素人には完全にお手上げで、じっと見守るしかないのでしょう。。





さて、本書は戦後最強の相場師と言われた是川銀蔵をモデルにして書かかれた小説です。現代の相場師が村上ファンド村上世彰氏だとすれば、かなりおもむきの異なる人物像ですね。 『異形の将軍−田中角栄の生涯』 を書いて話題になった直木賞作家の津本陽氏の作品で、大変おもしろい一冊でした。





主人公はこれまで波乱の人生を送り、すでにはたから見れば、隠居生活に入っているのですが、79歳を迎えた時につぶやきます。「いよいよ、儂のこの世で仕残した勝負をはじめるか」 。 



妻と二人で質素な暮らしをし、もちろん大変な資産家となって、なに不自由なく暮らせるのですが、それを全部失ってしまうような無謀な勝負に出ます。株を通して大企業や証券会社、他の仕手筋との駆け引き、死闘が繰り広げられます。





相場師でありながら、金のためではなく、自分の存在証明をさがしているかのように戦い続けるのです。 株式相場というものにほとんど知識がない私でも、本書で描かれる戦いに引き込まれました。



ただし、あくまで小説ですから実話に基づいているとはいえ、投資に役立つというような類の本ではありません。スケールも違いすぎますし。



本書を読む前から、是川銀蔵という人物の名前は、どういうわけだか何度も聞いたことがあるのですが、読了してあらためて、Wikipedia を見て驚きました。波乱万丈というのは、まさにこの人の人生を言うのだと。



このプロフィール、小説家であれば書いてみたいと思うのではないでしょうか。私もその人柄と人生に関して詳しく読んでみたいと思いました。





津本氏の他の作品もまだまだ読んでみたいものがたくさんあります。何かお薦めのものがありましたら教えて下さいね。 





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最後の相場師 新装版 (角川文庫 つ 4-1)

            津本 陽

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