『灘高キムタツの国立大学英語リーディング超難関大学編』 木村達哉





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灘高キムタツこと、木村達哉先生の注目の一冊、『国立大学英語リーディング(超難関大学編)』 が発売されました。以前、ご報告させていただきましたが、本書の中で、私と当教室をご紹介をしていただき、私も1ページのコラムを書かせていただきました



(まっ、どうせ出ているので…、不肖、VIVA、本名は光岡誠司と申します。塾名は「個人特訓教室」と言います。よろしくお願いします。照れる…。ついでに木村先生との写真 ⇒ Enjoyed Ourselves





というわけで、ただでさえお薦め(笑)で、多くの生徒に使ってもらいたいのですが、生徒が使い方などを間違えることのないように、この書評も厳しい眼でしっかり書いておこうと思います。





まず、特徴は何と言ってもその英文のレベルの高さです。難関の国公立大学や医学部志望の生徒が対象ですから当然です。以前、同じカリスマ教師、同じ “超難関” を謳った竹岡広信先生の 『入試超難関突破!解ける!英語長文』 をご紹介しました。しかし、本書とは難易度にかなりの違いがあり、こちらの方が英文の質も量も数段レベルが上です。





従いまして、いくら仮に国公立大学志望だとしても、現在偏差値50以下の生徒が一人で本書に取り組むのは薦められません。目安として偏差値55、できれば60くらいないと独習は苦労してしまう可能性が高いので、現状そこまで届いていない生徒は、家庭教師なり、学校や塾なりで解説してもらうのがベストでしょう



(あっ、もう宣伝ついでに…、もちろん私で良ければいつでもやりますし、当教室には私なんぞより力のある英語教師がたくさんおります。はい)





後から触れますが、選択された英文は国公立受験生にはうってつけのものですから、偏差値を問わず、国公立を狙うなら読んでおきたいところではあります。





解説も木村先生のセンターレベルのリスニング参考書 『センター試験英語リスニング合格の法則』 で見られるような基本的な説明はありません。ただ各英文の終わりに、単語の意味だけは、【 prepare for 〜:〜のための準備をする / seek to do :〜しようとする 】 など、かなり易しいものから載せてくれています。



ですから、それを頼りに “チカラ技” で意味をつなげ、本書の訳と比較し、さらに解説を読んでも分からないところを先生に聞くという使い方も可能でしょう。何しろ20もの難解な英語長文が詰まっているわけですから、それなりの覚悟をして取り組んで下さい。





さて、扱われている英文ですが、トピックは苦労して厳選された跡がうかがえます。



“大学入試の英文なんて、何が出るか分からない、分かれば苦労しない” などと生徒はもちろん、教師も考えがちですが、実はそうでもないのです。特に国公立の二次では、同じ論旨が何度も出されます。(『英文快読術(行方昭夫)』にも、そのあたりの事情が出ています。)



なぜ、そうなるかと言えば…、 例えば、今、憲法改正や年金や選挙が話題だからと言って、自民党改憲の話が入試に出るでしょうか。大学は政治的な中立が旨とされていますから、まず出ることはありません。



同じ理由で、戦争というものの悲惨さ、経済格差の問題は出されたとしても、直接アメリカ、中国やイラクを非難したり、賛同したりするものも出しにくいですね。また、もちろん殺人事件やギャンブルなどは教育上ふさわしくありません。





スポーツについてはどうでしょう。本書で木村先生はサッカーの話題が出た時のことを、Chapter1の Strategy12 “予備知識を増やそう” のところで書いておられます。まさにその通り、正論で、実際、サッカーに関する英文を出す大学もあります。



しかし、突き詰めれば、まさか国公立大学が、我が校の新入生にサッカーの知識を求めるはずは無く、求めているのはそういう情報を“一応”持っている常識人だということです。木村先生の言わんとするところもそこでしょう。



大リーグが話題になっても、野球部とそうでない人、男子と女子におのずと有利不利が想定できるような内容ですから、ほとんど具体的内容が出されることもありません。他に、例えば茶道や花道などの芸術分野も同じようなことが言えます。



イチローポケモンのように社会現象にまでたどり着けば出される可能性が一応は高まるわけですが、それでもなかなか中立な話題というのは少ないというのが現実です。



そう考えると、では、いったいどういうものが出やすいのか…。



環境問題などは最も出しやすい話題です。今なら、たとえ日本語のものでも、環境に関してはいくら知識を入れても入れすぎることはありません。また健康や男女、人種、年齢の平等や民主主義、平和、言語や教育にコミュニケーション。遺伝子やクローン、臓器移植などの先端技術やそれにともなうモラルの問題。ほんの数年前は、携帯電話のマナーがこれでもかというくらいいろんな大学で出されました。



そして、もっとも中立なトピックである、“動物” に関しては、意外なほどよく出されます。今も昔も。とにかく 繰り返し似た内容の英文が出されるわけですから、しっかりやっておけば、初見であっても何となく推測できる内容というのは、特に国公立には多く出されます。



実際、本書の題材を挙げますと





・仕事と余暇に関する考察(神戸大)

 

・知能の高さと老齢期の幸福に関して(名古屋大)

 

動物実験と医学に関して(北海道大)

 

・ロンドンで通じなかった英語(神戸大)

 

・3つの国のはざまで揺れるアイデンティティ(東北大)

 

・コンピューターの普及と情報量(東京工業大

 

・幼児期のテレビ視聴と注意欠陥障害(名古屋大)

 

・現代科学の発展と芸術との相違点(東北大)

 

・ストレスの功罪とコントロール法(神戸大)

 

・美の本質に関して(九州大)

 

・クローン人間の正当性(大阪大)

 

・見合い結婚の効用と結婚生活について(名古屋大)

 

・男の子に泣くなと教えることの妥当性(北海道大)

 

・コンピューターの世界における女性差別(名古屋大)

 

生物兵器化学兵器に関する国際的取り組み(九州大)

 

・生態系の経済的価値(大阪大)

 

・幸福になるために必要な要素(大阪大)

地球温暖化に関する議論(オリジナル)CD解説あり

 

・キッチンにおける男女の役割の変化(オリジナル)CD解説あり

 

チンパンジー社会と文化に関する考察(オリジナル)CD解説あり






わかりますよね。すべてニュートラルな話題で、これからも出され続けられそうなものばかりです。こういう言い方は、木村先生の揚げ足を取るようで、申し訳ないのですが、やはり先生ご自身もサッカーの話題は出されません。旧帝大は私立とは違うのだと感じておられるのだと推察します。



先生は、国公立大学の出題範囲が多岐に渡るとお考えになり本書を執筆されたそうですが、私は逆に以上の理由で、国公立の出題可能分野は狭いので、本書のように全体的なものをやっておけば、かなり有利だと考えます。



もちろんチンパンジーじゃなく、ゴリラもあれば、カバも犬もねずみや鯨や鳥や恐竜だってありますから(笑)、そういう意味では広いのですが、それが自然保護や種の保存という観点から述べられていれば、ジャイアントパンダであれ、メダカであれ、英語としては同じ論理展開です。





で、ここが重要ですが、本書を一通りやってから、個々が自分の志望校の過去問で傾向を分析、確認し、さらに絞り込む と実に能率的に勉強できます。





さらに長くなりますが、大変、重要な点をもう一つ。





企画段階で、すべての英文にキムタツ先生の解説CDを付けてしまうと、生徒の考える余地を無くしてしまうので、それは止めましょうと、私自身が進言しておきながら何ですが…、最後の3題に付いているCDは大変分かりやすく、解説に無駄がありません。英語が苦手な生徒にはとてもありがたい。



私もはじめて先生の授業を拝聴しましたが、先生、授業がものすごくうまいんです。当たり前ですね (あ〜まずい)。





そこで、本書の構成を台無しにする気か!と今度は本当に怒られるかもしれませんが、偏差値が、上で申し上げたように、ある水準に届いていない生徒は、ぜひ、まずこの最後のCD付きの問題からやれば良いと気付きました。





本来、これは木村先生やアルクの意図では、締めくくりの実力テストの形で付いているものに想定されていますが、解説がとても詳しく、ゆっくり丁寧になされていますので、読むだけでは理解しにくい生徒も、鉛筆で印を付けながら、授業を聞くようにその英文を追っていけば、勉強の仕方がわかるというものです。英語のつながりを確認するとはこういうことかと…。



先にそのCDを聞くことで、解説を読んでも、今ひとつ理解できなかったものが、同じパターンで出てくる英語表現がたくさんありますし、CDの方はほぼ全文を解説してくれているので、読むよりも、ずっと短時間で分かるはずです。英文解釈のコツのようなものをCDでつかんでから、前に戻ってやる勉強方法を強く薦めます。





その方法なら現在の成績に関係なく使えます。入試最高レベルの英文を読む楽しみや難しさが見えるでしょう。





そして、最後に付いている単語集。これは、木村先生とご一緒させていただいた時に私自身がぜひともと要望したものなので、見かけはちっぽけですが、的を射た選択で、発音記号も必ず付けて欲しいとお願いしたのですが、そうなっています。ですから、大げさですが…、感無量です。



私が高校生なら、この部分をきれいにカッターで切り取り、最後の先生のメッセージと一緒に持ち歩いて、通学時間でチェックし暗記に使います。今では身近にコピーがありますから、単語集を自分専用の冊子に作り変えて覚え切ってしまったらどうでしょうか。





以上、というような訳で、トップレベルの生徒にとっては夏休み中に本書を完全に理解できれば、相当な実力者となれるでしょう。実力が届いていない人はうしろのCDを聞いてから、あるいは最後の単語集を覚え切ってから使うのが良いはずです。



私にとっても貴重な体験をさせていただいた思い出の一冊になりますし、国公立大学合格を目指す受験生にとっては、内容も申し分ありません。本書がぼろぼろになるくらい反復して下さい。





まぁ、木村先生から、時折、ご相談を持ちかけられたことを良いことに、出版の世界の事情などお構いなしに、とにかく受験生にとって理想的なことばかり注文を付けたのですが、それに近いものが (ついでに申し上げれば、2000円未満で) 本当に出来上がりました。



本書のおかげで、私も英文テキスト選択の手間が大幅に省けますので、どんどん使わせてもらいます。ありがとうございました。



灘高キムタツの国立大学英語リーディング超難関大学編



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P.S. 一点だけ、残念でならないのが、せっかくの私のコラム、一生に一度のつもりで書いたのに…、ひどい誤植がありました(泣)。一番良いところで…。まぁ、アペンディックス(おまけ)なので受験生にはどうでも良いことですが、見た瞬間ぶっ倒れそうになりました。くやしい〜。ふ〜、ま、探してみて下さい…。

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