年次改革要望書
日米関係に関して、いわく付きの本です。本書はその内容があまりにも生々しかったためか、アマゾンでは一年近く入手できなかったということが話題になった一冊です。どうして普通の書店にあって、アマゾンで品切れにしていたのか真相はわかっていないようです。マスコミでその問題が取り上げられてから、販売を復活したそうです。
最近でこそ国会で取り上げられることのあるアメリカ政府が日本政府に対して出すいわゆる“年次改革要望書”、正式には“日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書” というのですが、実質的にはこれがアメリカのあからさまな内政干渉、どころか植民地に対する命令書ではないかとすら指摘する人までいます。
本書はそれを告発したものです。にわかには信じられないような事実が多くあり驚かされました。著者は、もし我々が日本の将来を予見したいのならば、この年次改革要望書を見れば分かるとまで言い切っています。
確かに、郵政民営化にしても、天下り禁止に関しても実に細かく “要望” されています。他にも会計基準、社外取締役制、独占禁止法、司法制度などの改革・改正はいずれもアメリカが用意周到に自国の利益のため、日本に改革を迫り、実現してきたかが良く分かり、恐ろしくさえなります。
ただし、この“年次改革要望書” というのは秘密文書でも何でもなく、在日アメリカ大使館のホームページにも掲載されています。また、勘違いしている人が多いようですが、日本政府もアメリカに対して同様の要望書を出してはいるのです。
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アメリカの要望書(在日アメリカ大使館HP) 日本の要望書(外務省HP)
従って一応は対等な互恵関係を目指しているのです。が、どうでしょう、読み比べて思ったのはやはりアメリカの指摘は細かく、自国の利益をはっきりと主張しているのに対して、日本は弱いかなということです。
法律など専門的なことが実に多く含まれていますから、正直、そういう知識のない私には、これがどれほどの内政干渉にあたるのか判断がつきません。とりあえず教育に関しては、最新のものには含まれていませんでした(当然か)。本書ではそのあたりははっきり述べられています。要するにアメリカの傲慢な要求だということです。
目次は以下のようなものです。
1 北京・シカゴ枢軸の怪(ささいな発端;中身はアメリカの制度の焼き直し ほか)
2 対日圧力の不可解なメカニズム(阪神・淡路大震災;半世紀ぶりの建築基準法大改正 ほか)
3 この世はアングロ・サクソンの楽園(バブル経済の破裂;株価に翻弄された人生 ほか)
4 万人が訴訟する社会へ(「わたし、訴えてやる!」;訴訟社会への急激な変化 ほか)
5 キョーソーという名の民族宗教(フリードマン教授の誕生日;大恐慌とケインズ革命 ほか)
本書をそのまま受け取れば、小泉首相の改革は結局のところアメリカのいいなりに過ぎないのかなという印象も持ってしまいますし、アメリカに対する不信感を抱かせ、日本の政治力のなさを嘆かざるを得ません。
日本の政治家が “ガイアツ” をわざと利用して、国内の護送船団方式などを改革するというストーリーもよく聞きますね。外圧を良いことに、自らの要求や主張を通そうとする勢力も日本にいるのは間違いないでしょう。
アメリカだけでなく、諸外国は日本に対して本当に遠慮なく自国の主張を展開しますね。それが外交のスタンダードだとしたら、日本がそれをどうしてすべて受け入れているのか。明らかに利益が背反すると思われるものがあるわけです。
これまでご紹介した、『小説 ザ・外資(高杉良)』 『黒字亡国(三國陽夫)』 を読み、あわせて考えますと、やはり日本人はアメリカに対し常に受身で弱い。国防という肝心なところで頼っている限り、変わらないのかという気もしてきます。
BSE問題では、アメリカ産牛肉の輸入に関して、これまで頑張っていた印象ですが、今回の安倍総理訪問直前に決着したと報道されました。いわゆる、手土産?他にもいろいろな疑問がわいてくる、強烈な一冊でした。
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