『乱世の英雄』 海音寺潮五郎

 

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待ちに待った連休ですが、休めない人もいます。コンビニ、ファミリーレストランなどのサービス業のお仕事のみなさん、ご苦労さまです。


何年か前のゴールデンウィークの川柳で…

 『 休みなし渋滞ニュースにざまーみろ 』 

  という“おとなげない”名句がありました。(気持ちはわかる(笑))


当教室ゴールデンウィーク期間の休みは、日曜日以外は30日だけなので、思いっきり勉強の本でも取り上げようとも思ったのですが、やはり大人気ないのでやめときます(笑)。

ゴールデンウィークにゆっくり、のんびり楽しんで読んでほしい一冊です。大人も子どもでも(中学生くらいから)楽しめると思います。


歴史の本当におもしろいところを下世話なレベルに落として、剣豪やら、大奥やら、大名らを分析します。天下国家の次元ではなく、英雄の足跡などでもなく、なるほど“食っていく” ためには、そう行動せざるを得ないのかという具合に納得できるような話ばかりです。


教科書に載っているような人は、後世の人から見れば、みんなまるで神様のように感じてしまうわけです。そもそも普通の人の話題はあまり載りませんしね。 “武士!” “サムライ” などと聞くだけでカッコいいですもんね(笑)。

ですが、生まれながらの宗教家などならいざしらず、昔の人、歴史上の人物がすべて品行方正、人格高潔なんてはずがないわけです。当然ですね。もちろん現在の価値観から判断してはならないのですが、それに合うように、かっこよく書き換えられていたりするわけです。

サムライはすべて命をかけて、主君を守り、農民はみな日の出から日没まで休む間もなく働いた。な〜んてイメージが勝手にできてしまいかねません。


海音寺氏の最大の功績は、“史伝文学” というものを復活させたことだと、WIKIに書かれていました。史伝文学というのは、“歴史上の人物や事件を対象として作品を物語風に書く中にあっても、フィクションの要素を完全に排除し、広範かつ詳細な文献調査などをもとにして、歴史の真実はどのようであったかを明らかにしようとする形態” の書物を指すそうです。

海音寺氏は、日本人から日本史の常識が失われつつあるとして当時の状況を憂慮し、“文学としての史伝復興の露ばらいの気持ち” を込めて執筆に取り組むことになったそうです。

本書でも、例えば、普通の武士が刀は “武士の魂” などと神聖視していたはずがない。のこぎり代わりに使っていたりもした、と教えてくれます。そもそも実用にたえられなくなると、博物館の展示品のように、逆に貴重なもの扱いされると指摘します。な〜るほどと思いませんか。


そういうお考えですから、池波正太郎氏の作品が気に入らないらしく、非常に厳しい批判を加えています。拙ブログでは、池波氏の 『信長と秀吉と家康』 という私から見ると理想的に見える作品を取り上げました。

海音寺氏は、どうも池波氏の作品が史実に関するものなのか、フィクションなのかが曖昧になっているところが許せないようです。逆に司馬遼太郎氏を非常に高く評価しますね。


本書では、谷崎潤一郎氏のある作品の、菊を栽培する場面をとらえて、

『現代の菊作りのようにしか描いていない。(中略) もし、谷崎氏が、このことに気づいたら、あの人らしいエキゾチズムのあふれた面白い場面が出来たであろうと、おしまれるのである』 と何気なく批判しています。

また、別のところでは

『谷崎氏ほどの作家が、そして、国文学に対しては、あれほどの造形のある人が、ここに気付かないのは、古典を、文学や、普通史学の目では読んでも、社会史または民俗学的に読むことをしないからである』 と述べています。

何となく海音寺氏の歴史文学に対する考え方がわかる気がします。歴史を深く知っている人から見ると、そういう点が気になって、ずさんな作品に感じてしまうのではないんでしょうか。


時代はばらばらに取り上げていて、まとまったテーマがあるわけではなく、エッセイなのですが、歴史の人物が非常に身近に感じることのできる一冊でした。また、その筆者にも親近感がわいてくるような本ではないでしょうか。

どーぞ、ご・ゆ・っ・く・り、お楽しみください(笑)。さ、仕事、仕事。

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なんで今日がメーデーなんでしょうね。