『日本史の一級史料』 山本博文

 

日本史の一級史料.jpg


帯には歴史は1秒で変わると書かれています。

現代人が織田信長の肉声を聞くことも、関ケ原の戦いを目撃することもできません。すべての歴史の知識は残された史料によってのみ、歴史家によって作られたものだということになります。

そして、もし何か新しい史料(資料のうち歴史に関わるもの)が出てきたり、新しい解釈がなされればその一秒の間に書き換えられるというわけです。実際に今でもさまざまな新史料は発見され続けているそうです。

 

本書は導入部分で、宮本武蔵忠臣蔵を比較します。

NHKの大河ドラマは平成15年は一年間かけて、宮本武蔵を扱いました。吉川英治の長編小説も有名ですし、コミックの『バガボンド』も強い人気を誇っています。

バガボンド.jpg           宮本武蔵.jpg


クライマックスの巌流島の戦いは1612年ということになっていますが、その同じ江戸時代の1703年、こちらも日本人に人気の高い『忠臣蔵』、すなわち、吉良上野介義央の屋敷に討ち入り事件がありました。仇討ちをした大石内蔵助良雄以下47人の赤穂浪士の話ですね。


この二つのどこが対照的かというと、宮本武蔵に関してはほとんど信頼にたる一級史料が残っていないというのです。逆に忠臣蔵に関しては豊富に残っているそうです。こういうやつでしょうね。


古文書1.jpg



ちなみに手許にある日本史用語集で見てみますと、確かに宮本武蔵は名前すら出ておらず、吉川英治が出ていました!そして、忠臣蔵の方では、赤穂事件に関して詳しく解説してあります。

武蔵に関しては、没後一世紀以上たって書かれたものがストーリーの下敷きになっており、身内や弟子たちがおのれの流派の宣伝のために書かれた可能性が高く、筆者によれば、武蔵の兵法の著作といわれる『五輪書』 も、その周辺の史料を探っていくと、弟子による捏造というか宣伝のようなものだとわかるそうです。


以上のようなことを出発点にして、歴史家がどのように史料を扱い、歴史を解釈するのかをわかりやすく説明してくれます。読者がどうやって一級史料を探すのか、教科書や歴史書を鵜呑みにしない歴史観を持つにはどんなことが役立つのかを示します。


目次は

第1章 有名時代劇のもと史料(宮本武蔵の一次史料はたったこれだけ;一次史料が豊富な「忠臣蔵」);

第2章 歴史家は何をどう読む?(東京大学史料編纂所;史料集の編纂とは何をするのか? ほか);

第3章 新しい史料を発掘する(歴史学の基礎を築く「史料採訪」;わたしの「史料採訪」 ほか);

第4章 一級史料の宝庫「島津家文書」を読む(島津家の文書とともに死ぬのなら本望;一次史料だけで「歴史」が書ける ほか);

第5章 「歴史学」への招待(いろいろな一級史料に出会う;データベースから史料を探す ほか)


となっています。大きな字で書かれた新書でわかりやすく、大学の史学科に進みたいと考えている高校生や私のようなまったくの素人には歴史学の導入として良い一冊ではないでしょうか。ただし、古文の勉強はしなおす必要がありそうですが(笑)。




P.S.実はよくコメントを下さる、あーりーさんは『歴史パロディ』というシリーズの本を書いておられます。今度取り上げますね。さらにラジオに、舞台にと活躍されていらっしゃいます。あーりーさんのブログ、ぜひ訪ねてみて下さい。


   おすすめ歴史小説(あーりーさんのブログ)

 

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『日本史の一級史料』 山本博文光文社:224P:735円