『初秋』 ロバート・B・パーカー / 菊池光=訳



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北方謙三氏の 『不良の木』 を昨年の秋にブログでご紹介しました。確かに大変おもしろかったのですが、“もう少し、主人公が、スーパーマン的ではないハードボイルドの作品でお薦めがありませんか” と言って、教えていただいた一冊です。(やまちゃんさん、ありがとうございました)





さっそく購入して、読んで、感動し、何としても昨秋の間に記事をUPしようと決めていたのに、ついつい今年の秋になってしまいました。別にいつご紹介しても良い、すばらしい作品だと思うのですが、結局、去年の秋と今年の秋、二度読みました(笑)。やっぱり良かったです。





主人公は私立探偵のスペンサーという男です。あるお金持ちの婦人から、夫が連れ去ってしまった15歳になる自分の息子を取り返して欲しいと依頼されるところから物語が始まります。



仕事を引き受け、難なく子どもをつれてもどりましたが、子どもの様子などから、どうも複雑な事情がありそうだとわかります。





しばらくして、同じ母親から、今度は父親が子どもを強引に連れ返そうとするので、住み込みで二人を守って欲しいと懇願され、その仕事も引き受けます。二人と同居してみて、その子どもは結局は、父親からも母親からもまったく愛されておらず、ただの取引の材料に使われていることがわかります。



すでにその時、その15歳の少年は、他人はもちろん、親や周囲の人間、そして自分の将来にすらまったく興味を示さず、めったに自分の部屋からも出てこないような生活を送っていました。



周囲の大人たちによってそんな風になってしまった少年を、スペンサーが立ち直らせようとする物語です。



裏の社会と通じつつ、悪事を働き金儲けに明け暮れる父親と、子どもを放っておいて自分の安易な欲望だけを満たそうとする母親。あることをきっかけに、まず、その二人から少年を引き離し、スペンサーは少年と二人で、自分の恋人の持っている別荘で生活を始めます。





そこから展開されるスペンサー流の教育が非常に興味深く、また少年が徐々に心を開き自立していこうとする姿がすがすがしいです。ハードボイルドらしく、その途中には、少年を連れて、殺し屋と戦ったり、盗みに入ったりするのですが、どれも印象的なできごとで、荒唐無稽なところはまったくなく、ドキドキしながら読めると思います。



多くの人にお薦めできる一冊だと思います。







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初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)

            ロバート・B. パーカー,菊池 光,ロバート・B.パーカー

            早川書房

            

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