『ラブリーボーン』 アリス・シーボルド 片山奈緒美 (訳)

 

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山口県光市で99年に起きた母子殺害事件の裁判のニュース、夫の本村洋氏の映像を見るたびに何ともいえない気分にさせられます。殺人という犯罪自体も許せないものですが、その後の被害者の家族とその生活を考えると本当に心が痛みます。



特にこの事件は残虐極まりなく、犯人は死刑に相当すると思うのですが、みなさんはどんな感想をお持ちなんでしょうか。オウムの事件も同様ですが、死刑に反対する弁護士の方々が多いということなんでしょうね。





光市の事件のことが報道されるたびに思い出すのが本書です。2002年にアメリカで最も読まれた小説で、書き出しは次のようなものです。





『わたしはスージー・サーモン。魚と同じ名前よ。一九七三年十二月六日に殺されたとき、まだ一四歳だった。』 







14歳で知り合いの男から暴行を受け、その場で殺されてしまった主人公スージーサーモンが、天国に行き、そこから自分の死後の世界を見つめ、家族、友人の幸福を祈りながら、みんなの成長や状況の進展を見守るというスタイルで進んでいきます。 



事件後、スージーの父親は犯人と思われる男の捜査に夢中になり、変人扱いされてしまいます。母親はやがて家庭の重苦しさに耐えられずに家を出てしまいます。



こうして、何も罪のなかった少女の家族がばらばらになりそうな中で、スージーの妹、弟や友人達が、スージーに様々な思いを抱きながら、それぞれ成長を遂げていく姿が感動的に描かれています。 



喪失感をともなったまま生きてゆかねばならない人、時の経過とともに変わってしまう人の心が14歳スージーの優しい言葉で綴られています。



450ページほどにもなる長編ですが、中学生、高校生なら夢中で読んでしまうのではないでしょうか。



なんと、著者自身も大学生の時、性犯罪の被害者となり、心に大きな傷を負っているという事実。そこから生まれた美しくも重い物語です。 







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ラブリー・ボーン

            アリス・シーボルド,片山 奈緒

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