『ビジュアル英文解釈 (Part1・2)』 伊藤和夫



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いわずと知れた、伊藤和夫先生の代表的テキスト 『ビジュアル英文解釈』 を取り上げましょう。こちらは昨日ご紹介した、西田実先生の 『英文解釈のトレーニング PLUS』 や 木村達哉先生の 『灘高キムタツの国立大学英語リーディング超難関大学編』 よりずっと易しいところから始まります。 





なんと中学生レベルの英語から難関大学の受験でも役に立つような英文解釈力を付けさせようという意図です。英語が苦手な人用の本というのは、たいてい、単に内容が削られていたり、単語が簡単になっているだけですが、本書は違います。



その点がすばらしいですね。英語が苦手だからといって、詳しい説明を省いたら、普通ますます分からなくなります。できないからこそ丁寧に時間をかけて説明してあげなければならないはずですものね。というわけで本書もかなりのボリュームです。





我々がつい何気なく使う、“中学英語” とか “高校英語” という言葉がありますが、もちろん本来英語にその区別があるわけではなく、日本の教育界の事情で勝手に区切っているわけです。



ところがいったん区切ってしまいますと、それをもとに教科書ができあがり、参考書ができ、受験もそれにあわせます。従って、中学英語は中学のその割り当てられた学年でしっかり理解しておかなければ、後から戻ることは困難です。



いったん英語が苦手になると、それを克服するのがなかなか難しいのは、そういう事情があるからで、数学など他の科目でも同様でしょう。さらに中学・高校のつながりが問題で、日本の区切り方ですと、中学英語が年々とても少なくなり、高校にはぎゅうぎゅうに詰まっています。



従って、高校生になってから英語が突然難しくなり、英語嫌いが急増しますが、上で述べたような事情で、戻って学習する機会はなかなかないのです。ですから中高一貫校などで、中3時点で高校の内容を勉強するのは、バランスから考えて当然のことで、詰め込みでも何でもなく、理にかなっているわけです。





本書は英語が苦手になってしまった人でも独習で、英語の全体像が理解できるように工夫されたものです。書名に “ビジュアル” とありますが、イラストがじゃまにならない程度入っているのと、わかりにくいところは英文のつながりを図で示しているからでしょう。





解説が語り口調ですし、会話などもふんだんに入っていますので、イメージとしては以前ご紹介した 『山口英文法講義の実況中継』 的な読み方ができるのですが、何度も前にやったことに言及をしたり、簡単な確認の質問があったりして、筆者の工夫、熱意が伝わってきます。



説明の仕方も、伊藤先生独自というか、これまでの豊富な指導経験から、生徒が理解しにくいところ、間違えやすいところを指摘し、一般の参考書と比べれば、大胆に説明の順番や仕方を変えています。そういう意味では英語が苦手な生徒にどう教えるかというヒントにもなりますので、教える立場の人も一読されたらいかがでしょう。





ただし、実際の生徒に薦めるには、本書が非常に個性的なものゆえ、かなり判断に迷います。生徒と一緒に読んでいくぶんには良いのですが、生徒一人で、Part1・Part2 を通読して理解するとなりますと、ページ数で、600近くになり、かなりの時間がかかりますので、今の時期の高校3年生にはちょっと薦めにくい。高1か高2でしょう。



また、中学生レベルの英語から入りますので、ある程度の実力がすでにある人には特にPart1はまどろっこしく感じるかもしれません。が、だからといって Part2 のみで勉強するとなると、これまでの解説が充分に参考にできず、果たして大きな効果が上がるかというジレンマがあります。しかも単語のレベルが一気に上がる印象です。





こちらは1987年に出されており、すでに20年も前の本ですから、この息の長い人気が本書の良さを示しているものの、どんな人に薦めるのが非常に難しいと感じます。非常にユニークな構成ですから、生徒によって合う・合わないが大きいということです。



一般的に言えば、適しているのは、英語が得意な高校1年生、苦手な2年生という気がします。ただ、最低限の文法用語は理解していないと最初からつまづきます。

ですから、購入を考えている生徒は、 最初のそうですね20ページくらいは実際に手にとって読んでみてから決めた方が無難でしょう。よく知られている本書ですから、当教室の生徒でも実際に持っている人が何人もいましたが、Part1の最後までやり終えるのでさえ、残念ながら少数でした。





くどいようですが、万人に最高の参考書などというのはありません。良い内容であっても、自分にとって良いかどうかはまた別の問題ですから、個性的な本は自分で確かめるしかないということですね。





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