『逆説の論理ー新時代に生きる日本の英知』 会田雄次



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歴史家である会田雄次氏の数多い著作のなかでも本書は極めて優れた現代評論ではないでしょうか。



学問的見地からいえば、氏の代表作は何よりもまず、小林よしのり氏らも取り上げる 『アーロン収容所』 (昭和37年)ということになっていますが、そちらの方はいわば“古典的名著”としてひとまずおき、読みやすさと具体性の点で、本書の方をお薦めします。 



“逆説” ですから、普通、人は勧めないことが出てきます。 “バサラ(乱暴狼藉)のすすめ” “喧嘩決闘のすすめ” “ぜいたくのすすめ” “なまくら四つのすすめ” “日本的知的生活のすすめ”  などから構成されています。





会田氏はヨーロッパ史が専門で、本書は日本との “比較文化論” でしょうが、内容は決して学問的なものでも、難解なものでもありません。中学生以上であればストレスなく読めるはずです。“学校や塾にこんな社会の先生がいたらおもしろいだろうな〜”というものです。 



読み手の年齢にかかわらず、問題意識を持ち前向きに生きようという人にとっては、非常に勇気付けられる一冊。なぜ、してはいけないと一般に言われていることをみなこっそりしてしまうのか。実はそれには大きな利益もあることが示され、日本社会はそれを許容しないためにダイナミズムが失われているというような内容です。



本書が最初に出版されたのは昭和54年ですが、そのどこまでも深い洞察力と歴史考察にもとづいた問題提起であるために、古いどころかとても新鮮な内容で、現在の日本の混乱振りを予見しているかのようです。





氏の日本に対する危機感はすでにその当時でもかなりのものでした。 司馬遼太郎氏も“もはやこの国を救う方法は無いに等しい”という旨のことを記していますし、会田氏にも同様の諦観が無いわけではないのです。





しかし心ある人々に何とか歴史的に見た現代の問題点を冷静に理解し、失われた矜持を取り戻してもらいたいという情熱が伝わってきます。



氏は平成9年に亡くなっていますが、時代が後になってから出版されるものほど危機感が強まり、使われている言葉も過激なものになっていきます。晩年の執筆活動は口述筆記の形になり、最後の著作 『歴史家の心眼』 には序文もあとがきもありません。



氏の著作をずっと読んできますと、体力の衰えと相俟ってますます世の中に対する焦燥感がつのっているのが手に取るようにわかります。



本書を含め、年々氏の著作が古書に頼らざるを得なくなり、入手しにくくなっているのが残念で仕方ありません。本書に限らず、会田氏の著作を読んで共感できる方がいればうれしいのですが…。 





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