『雨鱒の川』 川上健一



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本来は中高生以上にすすめしたい本なのですが、最近は中学入試でも従来の教育的、道徳的内容ばかりではなく、本書のように恋愛を扱ったものが出されますね。



女の子はともかく、男子生徒の中にはよく分からない子もいると思うのですが…、がんばってもらいたい(笑)!



実際に、本書は川上健一氏の作品の中では、『翼はいつまでも』 と並んで、ほぼ毎年のように、どこかの中学校で出題されています。





小学生でも読めるということですが、大人が読んでも素晴らしい内容で、思わず涙が出そうになってしまいます。つい先日ご紹介した 『夏の庭 The Friends (湯本香樹実』 も同様ですが、児童文学に分類されていても、名作というのは大人も感動させる力を持っているものです。



本書も映画化もされていますし、ご存知の方も多いでしょう。いわゆる純愛物です。二部に分かれていて、前半が主人公が小学生の時代で、後半は18歳に成長しています。





ストーリー■〜■ 







東北のとある村。母親と二人暮らしの小学校三年生の心平は、川で魚を捕ることと絵を描くことにしか興味がありません。学校の授業もそっちのけで絵を描いていますから、成績が良いわけはありません。



学校が終わると今度はすぐに川へと走って魚を捕ります。母親に捕った魚を食べさせるため。そしてまた絵を描いて寝る。そんな普通の小学生とは違った毎日を過ごす心平といつも一緒にいるのが幼なじみの小百合。



小百合は耳に障害がありましたが、心平とは心が通じ、心平の話す言葉だけは理解ができたのです。どちらも “普通” の子どもではないのですが、二人でいるときは暖かい交流、楽しい時間を過ごします。



そこに登場するのが小百合に思いを寄せるライバル、上級生の英蔵で、心平にはかないませんが、第二部でも重要な役を演じます。



ある日、心平の絵が国際的な児童画展に入選するのですが、その祝賀会の夜、なんと心平の母ヒデが雪の中で死亡してしまい、心平は幼くして、天涯孤独になってしまいます。



それから十年後、18歳となった心平は学業も仕事も大してできず昔のままですが、何とか小百合の父親の会社で面倒をみてもらいます。一方の英蔵は大学を出て、仕事もできる。小百合の父親にも認められ、とうとう二人に縁談の話まで出てきてしまいます。



絵を描くことしかできない心平は、本格的に絵の修行に出るように、村の人々にすすめられますが、彼らからすれば、村の厄介者払いに過ぎません。心平にとっても絵を描くことで自立できれば理想ですが、しかしどうしても小百合と離れて暮らすことができません。小百合の気持ちも同じです。



心平さえいなくなれば、英蔵と小百合の縁談話が現実を帯びてくるのですが、結局は、心平と小百合のきずなの深さを知った英蔵が覚悟を決めます。二人を船に乗って駆け落ちを助けてしまいます。









これ以上ないくらいの純愛物語ですから、やはり小学生男子には苦手な人もいるかもしれませんね。また自然描写もふんだんにありますから、先を急ぎたい人にはまどろっこしく感じるかもしれません。

しかし、逆にそれが非常に豊かな自然とけがれのない純粋な子どもの心を描いており、すがすがしい読後感を味わう人が圧倒的に多いでしょう。前半は特におすすめですね。



なまりのある方言で話しているのですが、慣れてくるとそれが切なく響きます。特に心平と小百合の言葉のやり取りの部分など、不自由な言語を通して相手の意図を汲んでやる場面は心動かされます。









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