『63歳・東京外語大3年 老学生の日記』 坂本武信



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筆者は1943年生まれですが、現役の大学生。慶応大学卒業後、保険会社に36年間勤めますが、急性心筋梗塞で生死をさまよったのを機会に、定年前に退職します。これから第二の人生をどう過ごそうかという時に、妻に言われたのは… “家にいないで!濡れ落ち葉はお断り!” す・すごい。本書の表紙は落ち葉でしょうか(笑)。



さぁどうしたものかと、特に深く思案することも無く、ネットで見つけた東京外国語大学の社会人入試を受けて合格。これまたまったくの偶然にポーランド語を選択し、自分の子どもよりはるかに年下の生徒、あるいは自分より若い先生との学生生活を始めます。





まぁ、ここまでの事情を読んだだけでも、どんなエピソードが出てくるんだろうと期待できると思いませんか。18・19歳が20人ほどいるクラスに、60を越える老学生が一人、教室に同じ身分で座っているわけです。



実際に読んでみますと、期待を裏切らないおもしろい話がいくつも披露されています。大学に入った以上はコンパもあるし、学園祭やテストや夏休みだってごく普通にあるわけですから、エピソードには事欠きませんよね。





そもそも大学でポーランド語を専攻しようとする学生がどういうタイプの人なんでしょうね。英語、フランス語、ドイツ語、中国語、韓国語、ロシア語、スペイン語くらいまでは何となくわかりますが…。私のような凡人には想像のつかないような人々がいるのではないかということも興味をそそられた原因かもしれません。



筆者の場合は、単に一番最初に入試で面接ができたのがポーランド語学科の教授だったというだけで、ポーランド語を選択し入学してしまうのです。



これに象徴されるような、筆者のこだわりのない姿勢。風の吹くまま、気の向くままという開き直った態度というか、悟りでも開いているかのような自然な生き方はきっと周囲の人からも好感を持って迎えられたのではないでしょうか。次々と起こる年齢ギャップゆえの “事件” なども楽しみながら、軽々と受け入れている印象です。



目次は以下のようになっています。







            大学生活(退職そして大学へ;現役学生になる;若い仲間達)

            

            わがポーランド(初めてのポーランド語学研修;再びポーランドへ;余談;三たびポーランドへ)

            

            老学生の目(賞味期限;よ〜く考えると;妻と娘と)
 




団塊世代に贈る、脱会社・脱女房宣言!” なんて宣伝文句が書かれていますが、世代を超えておもしろい一冊です。



筆者は保険会社のサラリーマンだったわけですから、もちろん文筆家ではなく素人のはずですが、まぁ、才能があるのでしょうね。ユーモアを交え読みやすく、読者に不快な思いをまったくさせないような文章に感心しました。





筆者のおかげでポーランド学科の同級生たちの大学生活がどれだけ豊かなものになったでしょうか。未知のものに直面すれば、普通の大人は興味より不安の方が大きいと思うのですが、筆者の場合はむしろ好んで未知との遭遇、偶然を求めているかのようです。



結局、縁もゆかりもなかったポーランドに三度も行き、そこでも持ち前の自然体と好奇心で、多くのおもしろい、時に感動的な経験をします。確かに失敗談もあるのですが、それをユーモアたっぷりに受け流し、良い経験をさせてもらった、勉強になったと喜んでいる姿勢に心惹かれます。





読み始めた当初は、リタイアするとこんなにも人は自由に生きられるのかと思ったのですが、やはりそれ以上に筆者の上で述べたような性格がそれを可能にしているのだと感じました。



団塊世代どころか、高校生諸君にもぜひ読んでもらいたいエッセイです。勉強の違った意味が感じ取れる人もいるでしょうし、大学が単に就職準備のためのサラリーマン養成所だけではないことがわかると思います。





こうして楽しんで勉強している姿は非常にすがすがしく、私にもし二度目の大学生生活があれば、きっとうまくやれそうだ、そんな気にさせてくれました。



 



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