『道路の権力-道路公団民営化の攻防1000日 』 猪瀬直樹



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猪瀬直樹氏が東京都の副知事に就任するというニュースが流れました。石原慎太郎都知事から、知事として後継者指名されたのだと解説する向きもありましたね。驚きました。





猪瀬氏といえば、世間の注目、期待を一身に背負って取り組んだ道路公団改革です。小泉内閣の目玉で、当時、官僚を問い詰めていくさまは爽快感すらもってニュースを見ており、成果が上がったと思っていましたが、次々に骨抜きだの、仲間割れだと批判されました。





その急先鋒は櫻井よしこ氏でしょうか。正直、当時テレビでお二人の議論を聞いていても、やはりあまりにテクニカルで、どちらに分があるのか判断できませんでした。お二人とも反官僚政治でしょうし…。やり方が生ぬるいということなんでしょうか。櫻井氏も 『権力の道化』 という本で説明しているようですが、私はまだ読んでおりません。





以前ご紹介した、佐藤優氏の『国家の罠』に対する評価で、【櫻井よしこ VS 藤原正彦】 を取り上げた時は、櫻井さんの真意がわからず、また佐藤氏の著作を好意的に読んでいる私には、藤原氏に分があると思いましたが、道路は難しいです。





さて、本書は、行革断行評議会委員、民営化委員会委員として道路公団民営化に取り組んだ猪瀬直樹氏の活動を描いた書き下ろしです。本書は抵抗勢力の活動を記録に残すという、明確な意図があるように思います。



とにかく税金を入れずに道路公団をはじめ、4つの団体を同時に民営化すること、それに巣食っている役人、政治家、ファミリー企業の実態を白日の下にさらすことが、猪瀬氏の目指す改革ですが、当時の藤井総裁解任劇、覚えておられるでしょうか。あれに象徴されるように、その抵抗はすさまじく、極めて陰湿です。 



いや、むしろ藤井問題などは、ことの本質から国民の目をそらすために利用されている印象すら持ちます。ものすごい芝居だなと。





確かに、藤井総裁解任劇は見た目は華々しかったのですが、それ以外にも民営化委員長の解任問題、文春での裏財務諸表暴露問題、そして桜井よし子氏による猪瀬氏名指しの批判論文などなど、多くのことが同時進行で起こってきます。それが出てくる経緯というのは、見てすぐわかるというものではありません。



櫻井氏はともかく、そうした問題の裏側で進行しているのは激しい権力闘争や、利権確保だったということが本書を読むとよく分かります。妨害工作は実に巧みに行なわれ、テレビや新聞などの報道だけでは全体像はつかめません、というより普通なら猪瀬氏らに批判的な考えを持つでしょう。本書を読んでいなければ。



目次です。





第1部 行革断行評議会篇(聖域に挑む;実力者たち;九三四二キロという旗;変人の戦術)

                        

                        第2部 道路公団民営化委員会篇(民営化委員会発足;総裁たちの弁明;「凍結」の道路;論破;最終答申;国民の選択
 




そのあと、新しい道路公団総裁が決まった時に「命をかけるつもり…」と新総裁は自らの意欲を語ったのですが、それを受けて、猪瀬氏はテレビで 「つもりじゃダメなんだ。命をかけないと。私は命をかけてやっていますから」 と言い切りました。本書を読むとなるほどそれくらいの意気込みだと納得できます。



また、佐高信氏も最近の著作の中で猪瀬氏を痛烈に批判しているそうです。また、自民党道路族からは、何とか猪瀬氏の民営化委員就任を止めようとして 「ヘンな作家」 とか 「しろうと」 などぼろくそに言われていました。





まぁ、確かに妥協もしていますが、守るべきところは守ったと思っていましたが、そういえば、前後しますが、これまた、よくわからないのは、同じ改革派でも、道路公団民営化法案が出されると、「骨抜きだ」 ということで、さらに二人の改革派と目されていた委員が辞任したということもありましたね。あ〜あ、みんないなくなっちゃったという感じがしたものです。



本書を読んで、猪瀬氏の主張は筋が通っていると思いますし、それを実現するためのエネルギーや行動力もけた外れだとわかります。とうとう敗北してしまったのか、何とか改革の道筋を付けたのか議論が分かれていますが、おもしろい上に官僚の世界、政治の世界のしくみを知る上で、大変勉強になる一冊でした。







P.S.個人的には、四面楚歌、孤軍奮闘、満身創痍、そんな状況に見えてしまう中でがんばっている猪瀬氏にやや同情的になっていることも事実ですが…。石原都知事は猪瀬氏の何を評価したのでしょうね。また櫻井氏の著作も早めに読んでみようと思っているところです。 





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