外務省 改革案

『外務省 外交力強化への道』 薬師寺克行



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昨日取り上げた 『さらば外務省(天木直人)』 とほぼ同時期に発売されましたが、センセーショナルだった『さらば〜』 の陰に隠れてしまった感のあるのが本書です。『さらば〜』 に比べますと大変地味なのですが、良書だと思いますのでご紹介します。



ちょうど、宮崎哲弥氏の 『 新書365冊 』 にも取り上げられており、宮崎氏の評価では、Best の 一つ下 Better になっていました。(ちなみに外交分野の Best の中の一冊は、以前取り上げました 『日本の「ミドルパワー」外交(添谷芳秀)』でした。よろしければご覧下さい。) 





本書は朝日新聞論説委員による外務省に対する考察です。この当時は2001年に9.11テロですぐにアフガン空爆日朝首脳会談で拉致を認めさせたのが2002年、翌2003年にはイラク戦争という忙しい時代でした。不幸なことにこの間、外務大臣田中真紀子氏だったり(笑)、ムネオハウスやNGO問題も2002年に起こり大混乱。そこに機密費や裏金問題のオンパレード。



機能不全に陥っていた感のある2003年に、天木氏の著作も本書も出版されています。まず本書では、一体日本外交の何が問題なのか、外務省の組織や、行動はどういう経緯で決定されるのかということについて整理しています。



例えば、2002年に行われた日朝首脳会談は、さまざまな点でいまだに謎が多いようです。どうして会談が実現できたのかとか、交渉の実態などですが、それを事実に基づいて検証していきます。交渉が進展しないままになっていることについて、宮崎氏は例の田中均氏に批判的ですが、薬師寺氏は同情的です。





そんな第1章から始まり、続きは以下のようなものです。







第1章
 日朝交渉の挫折



第2章
 変貌する日米同盟



第3章
 問われた外務省の体質



第4章
 新外交を阻む冷戦の残滓



第5章
 内交の時代



第6章
 外交力強化への道





機密費の問題だけでなく、全省あげてのプール金の問題、鈴木宗男に牛耳られたODA関係の決定の不明朗さ、北朝鮮との問題は一向に先に進まないし、国連中心といいながら、アメリカのイラク戦争にはいち早く賛意を示すなど、どれをとっても日本の外交は問題だらけで一貫性もないと指摘します。 



小泉政権当時、なんとか選挙前に拉致家族の帰国だけは真剣に取り組もうとしていました。国民のためというより、選挙で勝つためというのが見えてしまいます。そういったさまざまな報道から漏れ聞く外務省の組織を分かりやすく、問題点などを整理してくれます。





最後には“外交力強化のために”として前向きな提言もしています。『さらば外務省』の方が(ほぼ)現役が書いた告発の書だけに、インパクト、おもしろさの点で軍配が上がります。



ただし、ではどうするかということについては、『さらば〜』の方は「政権交代しかない」と突き放しますが、本書は今問題となっているようなシステムを作り変える提案をしています。



宮崎氏も本書は「読むべきところが多い」と述べていましたが、その通りだと思います。



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外務省-外交力強化への道-



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