『イラク生残記』 勝谷誠彦

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ブッシュ大統領の支持率が30%近くまで落ち込んだそうです。ついに末期症状でしょうか。



来年は大統領選挙。ブッシュ大統領の所属する共和党に対して、民主党の大統領候補ではアフリカ系アメリカ人オバマ氏と、ヒラリークリントン女氏の名前が取りざたされ、アメリカ社会も大きく変わりそうな気配はありますね。





ブッシュ大統領が支持を失いつつある一番の原因はやはりイラク問題。何とか片付けたい米政権をまるであざ笑うかのように、イラクの治安は悪化しているようです。



つい先日の自爆テロで、ジャーナリストを含む100人以上が死亡と報道されています。100人規模の死者が出るテロは、とんでもない大事件だと思うのですが、めったに新聞の一面にもならないし、我々も慣れっこになってしまったのかあまり話題になりません。



バージニア工科大学で、韓国人大学生の銃乱射によって、30人以上もの死者が出た事件には本当に驚かされ、怒りを感じましたが、イラクではとにかく毎日のようにイラク人、アメリカ兵が殺されているわけです。





そして、サマワからは撤退したものの、日本の自衛隊だっていまだに加わっているわけですから、いっそう早い解決が望まれます。





さて、本書はその勝谷誠彦氏のイラク取材のレポートです。十数年前、当時記者であった勝谷氏は、湾岸戦争を取材しようとイラクに向かいました。しかし、米軍によって、「前線の取材を許可するには順番」 があると言われてしまいます。





「最初に血を流している国、次に汗を流している国、最後に金だけを垂れ流している国だ」 と、実にあっけなく取材拒否をされたそうです。“国家が国家としての行動をきちんととらない時、その国民がどのような辱めを受けるかということを知った”、とあります。





そしてイラク戦争。記者を引退し、現在コラムニストとして活躍する著者が、再びイラクへの取材を決意しました。



その理由は、自衛隊サマワに入ってからの報道は横並びであるということ。東京では机の上で資料を読んで組み立てたもののような気がしていたと感じていると述べています。



1・ フセイン拘束に関する米軍の不審な報道。

2・ 奥氏と井ノ上氏の外交官の死。

3・ 自衛隊派遣性急さへの疑問。 



これらが引き金となり、自ら現場に行き、自分の目で確かめようという何年振りかの衝動が起こったためだそうです。しかし“取材”と言っても戦場ですから、相当な覚悟が必要です。



このブログでも、戦場を写した 『不肖・宮嶋 in イラク―死んでもないのに、カメラを離してしまいました』 という強烈な写真集と、イラクでの活動の厳しさがよくわかる『砂漠の戦争 - イラクを駆け抜けた友、奥克彦へ(岡本行夫)』 。きちんとイラクの歴史などまで記述された『イラク(田中宇)』 などを取り上げました。 





著者の取材に協力・同行したのが、殺害された橋田信介さんと小川功太郎さん。本書は亡くなった二人と、著者ともう一人の同行者の記録です。本書を書き上げることは、“偶然生き残った私の義務” と語っています。





本書に掲載されている内容はバグダッド入りする前に、襲撃され、首筋に拳銃を突きつけられ金品を奪われたことから始まり、外交官が襲撃された現場での取材、更にフセインが拘束された穴の検証、自衛隊がいるサマワへの取材。





著者が肌で感じた、イラクアメリカを率直に語ります。イラクはまさに戦場であるということが良く分かり、当時の小泉首相の言葉、国会での自衛隊派遣の論議や、テレビでもっともらしくイラク情勢をコメントする識者に対する怒りや無念の気持ちを飾らずに述べているように思います。




イラク生残記



講談社



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