『知識ゼロからの 現代史入門(アメリカ・ロシア・中国・パレスチナの60年)』青木裕司


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ことばはちからダ!』は受験用参考書ですが、すばらしい一冊で一般の方に薦めたいと申し上げました。

本書は逆に、一般書籍ですが、受験生が読んでも非常に理解しやすいのではないでしょうか。ただし受験や暗記のための “まとめ” などの配慮はありませんが…。

私は英語講師ですから、国語や社会の参考書を受験という観点からは評価しにくいのですが、現代史に関しては良い参考書がないとよく聞きますので、探しておられる方は一度手にとってみたらどうでしょう。


当教室の生徒が持っていたのを、『おもしろそうだ、貸してくれ』 とひったくるようにして読み始めたので、気付きませんでしたが、本書の著者は河合塾の人気講師じゃないですか。その代表的な参考書、 NEW 青木世界史B 講義の実況中継 (1)ー(4) を、genio先生の解説で、このブログでも取り上げました。読みやすいはずです。


genio
先生のブログ→  『入試に出る!時事ネタ日記 


共通一次試験(現センター試験)が導入されて以来、世界史を履修する人の割合が激減し(今年が約50万人中9万人)、大学では授業がやりにくいそうです。

受験生が世界史を敬遠する原因は明白。暗記量が他の科目に比べて多いからですね。未履修問題で世界史が突出しているのを見てもわかります。覚えにくいカタカナの名前だけでなく、中国の難しい漢字まで書かなければならないんですからね。

その上、学校の授業では、人類の出現、4大文明からやっていますと、だいたい現代史は学年の終わりになっても到達しない(笑)。日本中に現代史知らずが増える背景ですね。


さて、その内容ですが、知識ゼロからと言ってもかなり細かなことまで、丁寧に詳しく説明してくれています。実況中継が人気なのもうなずけます。現代史といえば第二次世界大戦以降のことを普通指します。

大恐慌がきっかけとなって第二次大戦に入った経緯を簡単に触れるところから始まります。日本では幸い、それ以降、直接戦争には巻き込まれていませんが、世界中ではいまだに戦争がなくなりません。“戦争はなぜ起こる?” というのが本書のもう一つのテーマでもあります。

20世紀は戦争の世紀と言われますが、21世紀は大丈夫だと言えるでしょうか。筆者は、『世界に貧困と「一方的な正義」がある限りテロは供給され続ける』、『暴力は暴力しか生まない』という歴史認識を示し、超大国を批判すると同時に、ビンラディンに対してもそのメッセージを最後に残しています。


ただし、政治的な偏りのある本ではありません。世界史の教科書には伏せられている、中国の経済失政が招いた大飢餓についても詳しく書いてあります。これが欠けると中国の近代化の遅れやその後の権力闘争の流れは理解できないはずです。


またユダヤ武装テログループが、イスラエル建国前に、アラブ人住人を襲ったデイル・ヤシーンの虐殺など、教科書や用語集には書かれていない情報もあり、やはり中東問題の理解を助けてくれます。


こうして現代史だけ切り取って、青木氏の主張に耳を傾けますと、日本史でいえば、戦後60年は平和で経済成長一筋の時代ですが、それとは対照的に世界中は相変わらず、大国によって、絶え間のない戦争が繰り広げられている時代だと感じます。


よい意味でも悪い意味でも、“日本の常識は世界の非常識” といわれる時代背景が痛感できました。お薦めの一冊です。 




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『知識ゼロからの 現代史入門(アメリカ・ロシア・中国・パレスチナの60年)』青木裕司
幻冬舎:253P:1365円