『灘高キムタツの頑張ってるから悩むねん。』 木村達哉

 

頑張ってるから悩むねん。.gif


やっと発売になりました。


日本有数の進学校灘高。その高3生の英語担当教師、キムタツこと、木村達哉先生のエッセイです。昨日、アマゾンから届き、即、一気読みでした。


私は、つい先日の記事で、今年のセンター試験前、受験生に贈る最後の一冊として、バートランド・ラッセルの 『幸福論』 を選びました。長年の私の愛読書で、ものすごいパワーと知恵にあふれた珠玉の名作だと思ってそうしましたが、本書を読んで、まず最初に思い浮かんだ感想が、

 
“あっ、これは、キムタツの幸福論 だ” というものです。

“夢ってなんだろう?”

“どうして前向きに生きることができないのか?”

“自分は変えられるのか?本当の自分って?”

“教育とは?”

“お金とか家族の意味は?”




こういう、根本的なことが気になってしまう、感性の鋭い若い人に読んでもらいたい一冊です。若くなくても、訳知り顔にものを言う、私のような大人たち(笑)、そういう人にも大変刺激的でした。(生徒が親に薦めるのに良いかも!)


さて、拙ブログを継続的にご覧頂いている方は、私がキムタツ先生とお付き合いがあることはご存知だと思います。そのきっかけは、私がキムタツ先生の最初のご著書 『センター試験英語リスニング合格の法則』 をどちらかと言うと、やや“批判的”にレビューしてしまったことです。それこそ訳知り顔に…。

 
それに対していただいた、先生じきじきの真摯なコメントに驚きました。どうして拙文が先生の目にとまったのか、その当時、まだ、ブログランキングにも参加していませんし、ブログをはじめた当初で、きっと一日のアクセスもわずか50くらいの時の記事ですから、偶然と言う他ありません。


 → 『センター試験英語リスニング合格の法則



まぁ仮に、こんな記事を見つけたとしても、無視して何の差支えもないのですが…。


最近でこそ、拙ブログでとりあげたご著者自身がメールを下さることが結構あるのですが、私が批判的に書いたものに対しては、こう言っては申し訳ないのですが、本や英語の不備に対して、読者、多くは受験生には関係のない、言い訳が多いのです。


やれ、忙しかっただの、出版社の不手際だの…と。その点でも、キムタツ先生のコメントは際立っていました。取り上げたことに対する感謝の意が表明されているのですから。


その後、続けて、


センター試験英語リスニング合格の法則(実践編)

東大英語リスニング

東大英語リーディング

東大英語ライティング&グラマー


を次々と出され、それぞれにレビューを書きましたが、これまた驚くことに、普通、“売れた”後に、出されるものは大抵、派手な宣伝とは裏腹に、手抜きが目立ったり、繰り返しの主張や英文が多くなるものですが、キムタツ先生の場合は逆。どんどん内容が濃くなっている印象です。


特に近著のライティング&グラマーは出色で、東大受験生だけでなく、多くの生徒に使ってもらいたい一冊です。いや、ほんとに。お世辞でもなんでもなく。ブログから一円の利益もありませんので(笑)。

また、こうしたネット上のやり取りの中で、“今度ぜひ一杯やりましょう” というのはどこでもあいさつ代わりですが、キムタツ先生は、実際に忙しい時期にもかかわらず、東大特講の前日に上京された折、私にわざわざ電話をいただき、実現しました。


→ 『Enjoyed ourselves


本書で繰り返し強調されている、“アンテナをはり、行動する” というのを確かに実行されていますね。ただ、アンテナの感度が良すぎて、私のようなものまで、そのアンテナに引っかかるので、どうかとも思いますが…(笑)。


また、思いがけず、灘高の未履修問題の発覚したその当日、私は、木村先生が出版物の打ち合わせ中(本書かな?) にもかかわらず、 “先生のフェアプレー精神を信じたい。すぐに、ブログで事実を公表して、お詫びのメッセージを出していただきたい”とメールをし、数回やりとりをさせていただきました。  


下手な対処をすれば、キムタツ先生のブログが炎上するリスクもありますが、先生は翌日すぐ、履修漏れの事実の公表と、自らの認識不足に関し、真摯なお詫びの記事をブログに出して下さいました。


→ 『履修漏れに関して(お詫び)』(キムタツのリスニング日記)


受験業界や教員の世界に無縁の方にとっては、単なるお詫び記事ですが、私にとっては、信じがたいほど、けた外れに勇気ある行動です。長くなるのでやめますが…。キムタツは本物だと、私が一番感動した記事なんです。


週刊誌も新聞、テレビ局も、さらに、きっこのブログまでも、遠慮なく、灘高や、その教師を批判しますが、まったくの事実誤認があります、きっと今だに。そのあたりは当教室、伊藤先生がきちんとした記事を書いてくれました。


 伊藤先生のブログ→『代々木の個別学習塾講師が想う、あれこれ


渋谷で二度目にお会いした時、私がその不公平に憤慨しながら、そのことについて話し合いました。先生は身に降りかかった批判や不利益を、まるで次のことに向けたエネルギーに換えてしまうかのようなポジティブな態度でしたが、その真意、考え方が本書を読んで理解できました。


人間、木村達哉がこれまで経験した多くの挫折。病気や受験での失敗、さらに父親の事業の失敗など…、筆舌に尽くしがたい苦労を経て、また読書を通じて、身に付けた人生観なんですね。


人生、泣き笑い、演歌じゃないけど(こんなこと書くと、叱られる!)、本当にそういう一冊で、私も読んで泣き、笑いましたね。


この世に生まれた以上、がんばらなあかん、生徒たちの役に立ちたい




それを再認識させられた一冊です。受験に関わるすべての人に読んでもらいたいなぁと思います。


P.S. 本書の印税は大部分ユニセフに寄付されるそうですよ。また、たまたま昨日は先生の43回目の誕生日だそうです。おめでとうございます。ますますのご活躍、祈念しております。

http://tokkun.net/jump.htm 

(当教室HPへ)

『灘高キムタツの頑張ってるから悩むねん。』 木村達哉
ベネッセコーポレーション:208P:1260円