『はじめて考えるときのように』 野矢茂樹/文 植田真/絵
大人の “絵本” であり “哲学書” です。
“考える” とはどういうことかを、正面から問いかけるような意欲的な一冊で、一人の哲学者と一人の絵描きが、大人向きの絵本のように組み立てました。
野矢氏は数学者で、専門的な著作も多々ありますが、最も “一般的” なものとして、『論理トレーニング101題』 が私の好きな一冊で、このブログでも紹介しました。非常におもしろい本です。
本書も、おもむきはそれとはまったく異なりますが、一般読者向けの興味深い一冊です。
どういうわけか、日本の学問体系では、理系・文系と明確に分けられ、数学は理系の代表格、一方、哲学は文学部、つまりもっとも “文系的なところ” にたいてい入っています。とすると、生徒にとっては、数学と哲学は両極端のように感じますが、不思議なことに実は両者はとても似ています。
共通するのは、“考える” 学問。
ちょっと偉そうに言わせてもうと、受験勉強でも仕事でも人生でも、一番のポイントは、他人より、ほんの少しゆっくり “考える” 余裕があるかどうか、これが大きい。
まるで世界地図の右端と左端が、実際は “うしろ” でつながっているように、数学と哲学も見えないところでしっかりつながっています。
偉大な哲学者であるのと同時に数学者でもあるというのは、アリストテレス、ピタゴラス、パスカル、デカルト、ラッセル、ヴィトゲンシュタイン などたくさんいますね。
生徒によっては(大人も)、数学や哲学は、もっとも現実の社会と遠く、実践的ではなく、役立たないものとされてしまいますが、むしろ生きていくうえで、もっとも根本的な学問だとも言えます。
本書はその “考える” とはどういうことなのかを、中学生や高校生にも理解できる言葉と、シンプルな風景画で綴った本です。
ただし、手軽な本ではありません。何回も読んでいるうちに腑に落ちる、そんな感じです。
パスカルは「人間は考える葦である」と言い、考え抜いていたアルキメデスは「ヘウレーカ(わかった)」と叫んで風呂を飛び出した。“考えて、わかる” とは何か…身近な話題、単純な例をふんだんに用いてその意味を読者に問いかけます。
あふれるような情報の中で我々は一生懸命考えているつもりでも、実際は立ち止まっているだけのこと方が多く、考えて行動しているように見えても実は情報に踊らされていることがあるように思います。
要するに、へんな言い方ですが…
【“考える”とは何かということを、じっくり考える絵本】 です。
文学部とりわけ哲学科などは不人気だと言われます。直接的に職業や資格に結びつかないものは敬遠されてしまうようですが、本当におもしろい学問はこういうものかもしれませんよ。
あまり流行っていない“考えること”、その重要性がじわりと伝わってきます。受験生は受験が終わってから読んでくださいね。
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『はじめて考えるときのように』 野矢茂樹/文 植田真/絵
PHP研究所:167P:1628円 (文庫本も同じ表紙で出ています。650円)