『沈船検死』 曽野綾子



 

沈船検死 曽野綾子.jpg

 


作家、三浦朱門氏の妻であり、自身も旺盛に活動されている曽野綾子氏の著作です。

新聞などに載る氏の発言を “元気のいい人だな” という程度の気持ちで読んでいたのですが、どういうわけか著作を読む機会を持っていませんでした。かつては自民党大会にゲストとして呼ばれ、大勢の議員に向かって、


政治家になられる、ということは、自己の利益や権勢のために働くことではなく、人々のために自ら選んで死ぬ準備があると言えることでありましょう。それができないようなら、すぐにも私のように、卑怯者でも嘘つきでもどうにか勤まる職業に転職されることをお勧めいたします


とやりました。テレビのニュースでそれを見た時の驚きは今でも思い出せます。 また小泉内閣が誕生してしばらくした時、話題になった首相のメールマガジン、(らいおんはーと)では、小泉首相に対し

 
いまだに小泉総理の演説にも国民の心に深く残ったものがない」 と直言しました。



さらに、「ボランティアの強制」 などを主張したり、ペルー元大統領フジモリ氏を自宅にかくまったりして話題になり、そういう断片的な知識しか持たずに本書を読んだのですが、さまざまな発言や行動の真意が分かりました。すべてがキリスト教に基づく信念で活動をしているのですね。


困っている人がいれば、南アフリカであろうが、インドであろうが、パレスチナであろうが、砂漠、僻地、難民収容所にどんどんわけいって、自身で危険を冒して活動をする。とても優しく、同時に厳しい人でした。


自分だけの平和主義、言葉だけの民主主義、偽善的なマスコミを徹底して嫌悪します。非常に強烈なインパクトがあり、さまざまな事がらについて独自の観点が示されます。

ノーベル賞作家の大江健三郎氏が、“沖縄ノート”の中で書いた、沖縄戦における集団自決の話し。戦争の悲惨さを表わす代表的な事件として歴史教科書にまで載ってしまいましたが、曽野氏は自分で何度も沖縄へ足を運び、徹底的に調査をします。


その中で、集団自決に関わる証言が次々否定され、当の大江氏はまったく現地取材を行っていないことを知り愕然とし、告発します。現在は裁判にもなっているそうです。

もし曽野氏が正しいのであれば、私にとって “平和と知性のシンボル” “日本文学の誇り” であった大江氏でしたが、彼がペンという暴力で罪のない人々のリンチをしているということになってしまうわけです。


そういえば、曽野氏はアメリカのイラク統治に関しても早くから “失敗”を予言していました。理由は 『アメリカ政府はアラブのことを知らないから』。ご自分で行動してきた人ならではの判断でしょう。


とにかくどんな権力に対しても、媚びることをしない、命を危険にさらしてまで行動をする。単なる作家やジャーナリストの範疇を越えて、 “サムライ” とでも呼びたくなるような女性だと知りました。




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沈船検死 曽野綾子 文庫.jpg (←文庫 459円)

 『沈船検死』 曽野綾子
新潮社:236P:1470円

 



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