ビジネス書 企業再建

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【夢は大衆にあり】 青山淳平.jpg

坪内寿夫という人物の生涯を描いた一冊ですが、坪内氏をご存知でしょうか。かつては、倒産しそうな企業を次々と建て直し、再建王と呼ばれ、松下幸之助本田宗一郎中内功などと並び称されたほどのカリスマ経営者です。


もともとは映画館など、娯楽施設などの事業で得た金を、人から頼まれ、地元の倒産寸前の造船会社に注ぎ込み、大発展させます。とても会社とは呼べないような企業でしたが、 “人を助ける” という信念で、猛烈に働き、動き回ります。

みなの反対を押し切って、犯罪者の厚生施設までその近くに、自分の金で建ててしまうほどですから、その人格がわかろうというものです。仕事の尊さを知って欲しい、雇用を提供したいということですね。


そうした再建の手腕で、実績を上げ有名になり、扱う企業も地元の小規模業者から、どんどん大きな会社へと移っていきます。すると、マスコミや政治家などを使った卑劣な妨害や、労働組合との激しい戦いも出てきます。そのあたりの攻防も読み応えがありました。あらん限りの知恵を出し、それでも敵をうらまず、すべてを成し遂げるのです。


やがて、晩年をむかえ、自分の再建した企業が造船不況のあおりで、苦境に追い込まれた時も、責任をすべて自分ひとりで引き受け、個人資産一切を会社の負債の肩代わりに当て、裸同然で表舞台から身を引いてしまうのです。

ダイエーの中内氏のような経営者とは、対極にある生き方だと感じます。


造船不況の深刻さは、河本敏夫 氏を覚えている方はご存知だと思います。かつては、自民党三木派をついで、総理候補にもなった超大物政治家でしたが、三光汽船という、自分が実質的オーナーであった会社が倒産に追い込まれたことで、事実上失脚、夢を絶たれました。

戦後最大の倒産と騒がれ、当時の業界を象徴するような出来事でした。田中角栄には、“自分の会社をつぶすような人間に国政をゆだねられるか”と、強烈に皮肉られたものでした。


業界全体が、塗炭の苦しみにあえいでいる、こういう厳しい時代、やがて政府までも、坪内氏の経営手腕に期待し、氏を担ぎ出そうとする案件が出てきます。


そして、そこに登場するのが、あの白洲次郎です。以前、『英語達人列伝』では、すごいエピソードをご紹介しました。まさに国士とも呼べる人物です。場面はわずかですが、坪内、白洲の両氏の、思いもしなかったつながりに驚きました。マッカーサーと互角に渡り合った、あの白洲氏までも動いたのかと…。


このように、その人格に多くの人々がひかれて、数々の協力を得るのですが、やはり企業がらみ、政治がらみですから、嫉妬や利害関係の不一致は常にあります。時代の流れと、高齢には逆らえず、ついには上記のような結末にいたるのですが、もっとも深く関わった会社、来島ドックは生まれ変わって今もあります。


実に読み応えのある一冊で、深く感動しました。また、日本の造船業界は今やものすごい勢いで復活を遂げました。その影にこうした先人の努力があったことに、歴史の重みや、経営の大切さを学びました。ビジネス書としても、骨太の人物伝としても読めると思います。



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P.S. 今日、本書を紹介しましたのは、相互リンクの yumamiti さん が白洲を取り上げておられたからです。“ブスかわいい” って知ってます???

ねえさん、Thank you!



『夢は大衆にあり』 青山淳平
中央公論新社:298P:1890円

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