『高校を変えたい! − 民間人校長奮戦記』大島謙

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世界史の履修問題とつながっているのかどうか定かではありませんが、とうとう茨城県立佐竹高校の高久校長の自殺というところまできてしまいました。

教職員たちの司令塔、学校のシンボルであるはずの現役校長が、自殺という衝撃的な事件によって、突然いなくなってしまった高校の混乱はいかばかりでしょう。残念この上ないできごとです。


常々思っていたことの一つに、“校長先生” という立場は、もちろん学校という組織の頂点には位置していても、どうも企業の社長とは全く違う、というのがあります。

部下である自校の教師たちは、企業サラリーマンとは根本的に異なって、入れ替わりもあります。 企業であれば、その会社の将来に自分の夢をかけた人物がその組織に参加していますから、社長と共に企業の繁栄という一つの目的を共有できますが、学校はそうはいきません。

企業が社長のもとに“一丸”となるのと、学校が校長と“一致団結”するのとは全く違うプロセスなり、戦略が必要だと思うのです。どちらがやりやすいかは明白です。

また、社長の上には何もありませんが(株主を除けば)、校長の上には教育委員会、さらに文部科学省に常に“指導・研修”を受けなければなりません。要するに、企業でいえば、校長先生の気持ちとしては、一国の主とはいえ、中間管理職に過ぎないということです。


校長という職は難しい、分かりにくい、そんなことを教えてくれた一冊が本書です。


筆者は三重県で初めての民間人校長として、公募によって選ばれました。大島氏は東芝入社後、東芝アメリベンチャーキャピタル社の社長まで勤めた後に、公募に応じた純粋なビジネスマンです。

私は大会社のビジネス慣行も、学校の運営の実態も直接は何も知りませんが、本書を読んで、同じ“組織” と呼ばれていても、両極端といってもよいほど違うなという気がしました。本書には、大島氏の応募の経緯から、その後の苦悩まで、すべて書かれています。

私自身が生徒の時には、校長先生はいつも優しくニコニコしながら生徒に声をかけていらっしゃいましたが、普段は授業もなく一日何をしているのだろう、と思ったものです。

筆者も校長業務の予想外の忙しさに苦しめられます。その中でも、有益でないものがかなりあるために、さまざまな改革に乗り出します。

何かしようとすると、必ず抵抗勢力が現れます。ビジネス界の常識で乗り切ったり、それではどうにもならないものに様々な工夫をして改革を成し遂げていく過程は痛快です。

同時に、“学校のしくみ” というやつは、こんなにも複雑なんだと知ることができました。 以前、ご紹介した、底辺高を改革する校長の物語 『熱血!ジャージ校長奮闘記(鈴木高弘著)』 も最高におもしろかったのですが、こちらの著者はまったくの畑違いの出だけに違った意味で勉強になりました。


結局は、システムの問題がどうであれ、命がけで改革しようというリーダーが校長になって、どれだけ先生方を巻き込めるか、そこにつきるのではないかという気がしました。

先生が変われば、生徒は自然に変わっていく、その様子が感動を呼び起こす、そんな一冊です。


それにしても校長先生の自殺というのはやはり衝撃です。本書のようにすべてがうまくいくわけではないでしょう。日本全国に校長先生は何万人もいます。偉そうですが、すべての校長にエールを送りたい、僭越ながら、教職を志した時の気持ちを思い出していただきたい。そう思いました。


http://tokkun.net/jump.htm 



 『高校を変えたい! − 民間人校長奮戦記』大島謙
草思社:241P:1575円


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校長先生、今は大変でしょうが、頑張っていただきたい!
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