『小泉の勝利 メディアの敗北』 上杉隆 



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いよいよ参議院選挙の公示です。年金問題やら閣僚の失言や事務所費問題で、あんなに高かった安倍首相に対する支持率がここのところ急低下。民主党などの野党にとっては絶好のタイミングで選挙をむかえて大チャンスでしょうが、さてどうなるでしょう。





選挙がある時には、定期テストの時事問題にも必ず出されますからね。生徒諸君も注目していろいろと覚えて下さいよ。ちょっと復習しましょうか。



参議院議員の被選挙権は30歳以上。任期は6年で、3年ごとに半数を改選する(衆議院は25歳。任期4年で途中解散もある)。全体の定数は242人で、選挙区146議席比例代表96議席に分かれる。各都道府県を選挙区とする選挙区制(大選挙区制:選挙区ごとに1から5名) と非拘束名簿式で全国統一での比例代表制によって行われ、重複立候補はできない。(衆議院は定数480、小選挙区300人、比例代表11ブロックで180人。拘束式で重複立候補ができる)





大丈夫かな?





今回は242の半分、121議席を370人くらいの候補者で争うことになりそうです。各党のマニフェストはそれぞれHPでご覧下さい。



 自民党   民主党   公明党   共産党   社民党   国民新党   新党日本









さて、本書です。



安倍首相の支持率が低下しつつあるのとは対照的に、引退時でも 歴代内閣最高の 60%という支持率を維持した小泉政権というのはいったいなんだったのでしょうか。



総理総裁を辞めてからはほとんど表に出てきませんでしたが、選挙が近付いた今になって、マスコミにその人気振りが報じられたり、再登板の話題まで出たりするほどです。



ところが政治関係の書籍でもブログでも、小泉政治を評価する声はほとんど見聞きしません。どんな政権でも功と罪があると思うのですが、まるで罪ばかりの政権だったかの印象です。



このブログで取り上げた本の中では、『戦後政治家暴言録(保阪正康)』 や 『総理の値打ち(福田和也)』 『さらば外務省(天木直人)』 あたりが最も手厳しい批判を小泉氏に加えています。





印象としては、政治に詳しい人ほど小泉政権に対する評価が厳しい気がします。私は政治に詳しくないので、功の方もある程度、評価をしています。何といっても電撃的に訪朝し、北朝鮮に拉致を認めさせたことと、不良債権処理を強行し金融機関を再生させたことが最も大きな功績だと思うのですが、これ以上書くと詳しい人から攻撃を受けそうなのでここまで(笑)。



罪はどこでも言われているように、あらゆる分野で本当に格差が広がったと感じること。教育問題に関して言えば、“一内閣一閣僚” と言っていたはずが、文部科学大臣をコロコロと変えてしまい、政策にまったく一貫性がなかったことです。





戦後3番目の長期政権、5年以上に渡りましたから、いろいろなことがありました。拙ブログで、小泉首相だけを扱った書籍は 『官邸主導(清水真人)』 と 『小泉純一郎最後の賭け(大下英治)』 の二冊ですが、小泉政権周辺による道路公団問題、日中・日韓関係を扱ったものや、その政治姿勢をどう評価するかというものまで、知らないうちに数多く取り上げました。 ⇒ 『政治・経済関連』 





本書では、小泉政権がワイドショー型とか劇場型と言われながらも、メディアは最後までその政治姿勢の本質を読み違え、過小評価してきたのではないかという問題意識から書かれています。



ただし、小泉純一郎を不世出の政治家であるから、それをきちんと評価しようというよりも、なぜメディアは間違え続けたのか、そこのところを検証しようではないかという意図です。





小泉政権誕生直後の組閣人事から報道は間違えました。いやそもそも、総裁選で、最初から小泉氏が勝つという予想すらできなかったのですね。あの超不人気の森政権をつぶそうと起こった、“加藤の乱”。 それ自体は不発でしたが、収まった後、森氏のあとは橋本龍太郎氏に決まりという雰囲気でしたから。



その後もいろいろありました。小泉は必ずどこかで折れるはずだというメディアや政治評論家の予想をことごとく裏切って、妥協しない姿勢を貫きました。“丸投げ” とか “使い捨て” “パフォーマンス” “独裁者” という批判をずっと浴びてはいましたね。





終わってみると、多くの元自民党の実力者に刺客を向けてまで衆議院解散に打って出たあげくに、郵政の民営化をやり遂げ、中国・韓国の批判を承知の上で8月15日の靖国参拝まで実現してしまいました。





以下が目次です。



なぜジャーナリズムは敗北したのか

政権前夜―嵐の前の静けさ

政権発足―テレポリティックス

その人脈と側近たち

聖域なき構造改革道路公団改革

小泉外交―北朝鮮

抵抗勢力の反撃

靖国参拝

重要法案

郵政選挙

後継者たち

兵どもが夢の跡

唯一の相談役

ジャーナリズムよ率直であれ 





筆者自身が評論家ではなく、まさに記事を書いていた当事者。5年半にも渡って小泉政権をウォッチし、記事にしてきた側で、要するに小泉政権に対するすべての記事を検証することは物理的にも不可能なので、せめて自分が書いてしまった誤った憶測記事そのものやその背景を検証しているわけです。



筆者も言うように、確かにある意味、自殺行為ですね。人が忘れているであろう過去の自分の誤報のようなものを、あえて遡上に乗せるわけですから。





万国共通のメディアの使命であるとされる権力監視という機能において、ここまで間違えを繰り返していたのだから、やはりその問題点をあぶりだしたいという正義感というか使命感は読んでいて伝わってきます。



大胆な選挙予想をはじめ、経済見通しや政局分析、外交評論家など、本当にことごとく知識人といわれる人々が訳知り顔で断定的に予想をし、それが見事にはずれても、まったく悪びれる様子もなく、その後にマスコミに登場し続ける現象は辟易とします。



小泉氏の行動を “パフォーマンス” だと切って捨てるマスコミの方こそ、みずからの予想報道の結果を検証もせず、反省もしないまま、日々パフォーマンスを演じている気がしてなりません。



それに乗ってくれるいわゆる知識人や田中真紀子氏に代表されるような人気政治家をメディアに登場させていると感じますので、本書の意図には共感を覚えます。筆者の結論として、小泉氏は正直な政治家だったと。自民党はこの前の選挙では勝ちましたが、壊れてしまった部分も確かに大きいですね。





そういう意味においては、非常におもしろい一冊だと思います。これから選挙予想もどんどん出るでしょう。権力チェックも必要ですが、そもそもマスコミが権力になっているのですが、それをチェックするのは自分しかいないということを訴えているような一冊です。







小泉氏関連の書籍です。





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小泉の勝利 メディアの敗北

            

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