『旧制中学入試問題集』 武藤康史



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確か、かつてのベストセラー、当時の受験生のバイブルと言われた 『試験にでる英単語』 (今だにそこそこ売れていてびっくり) を書いた森一郎氏だったと思いますが、氏が英語の易しさに言及し、“明治時代の日本語など普通の高校生にはとても読めないが、英語なら読める” と何かの本で指摘しておられました。





なるほどその通りで、夏目漱石の 『こころ』 ですら表記が難しいといって、教科書から姿を消してしまう日本語(国語教育)とは対照的で、明治時代の英文解釈の問題をその本に少し載せていたのですが、現在とまったく変わっていないことに感心した記憶があります。so 〜 that 構文だったような気がしますが…。



そこで、私も明治時代のあたりの英語、特に英語の入試問題をネットや書籍で探したのですが、全く見つからず、残念に思っていたのですが、本書にありました。あっ、やっぱりあったんだと、わくわくしながら読みました。



本書は相互リンクの buckyさん が教えてくださいました。Thank you so much! です。





もちろん、これは旧制中学の入試問題集ですから、英語は後半に付録のように入っていて、国語、算数などが中心です。英語に限らず、入試問題というのはどうも資料的価値が低いようで、いわゆる “過去問” が見つからず、筆者も必死になって旧制中学の問題をかき集めたようです。





興味のある人間にとっては、ものすごくおもしろい一冊です。“昔の人は尋常小学校や中学しか出ていなくても、よく勉強した” と、父母や祖父母に聞かされたものですが(つまり、“君は足りない” の意ですが…)、なるほどこんな入試を受けていたのだということがわかります。





目次です。





国語―「婦人は庖厨を治むるを習ふべし」に読み仮名を付け解釈せよ



算術―軍艦松島ノ長サハ89・9米ナリト云フ、何間何尺ナルカ。



歴史・地理―よい日本人となるにはどんな心得を守つたらよいか。



理科―着物についたあぶらあかを取除くにはどうしたらよいか。



あの人が受けた入試問題―ゐもりトやもりハ如何ニシテ区別スルヤ。




宮澤賢治岸信介宇野千代宮本百合子草野心平神西清竹山道雄吉川幸次郎中野好夫井深大山村聰丸山眞男堀田善衛安岡章太郎鶴見俊輔瀬戸内寂聴中村稔







目次は以上のようになっていますが、要するに、国語、算数、社会、理科という科目別で、その中が年代順に並んでいます。明治時代から戦前まで、資料として入手できた問題を羅列してあるわけです。



まずは時代が違うとはいえ、入試問題のレベルの高さに驚きます。もちろん義務教育ではありませんから、誰もが旧制中学へ進むのではないのですが、それにしても当時のエリートたちがこんな問題に悪戦苦闘していたのだと、驚くやら、微笑むやら、いずれにしろ別世界でした。





また、厳しい受験があったといっても、やはり時代の影は色濃く出ていて、模範解答の信じられないほどの、(今でいう)手抜き(?)、などなど、およそ、現代の受験に携わるものからすれば、“これ、いいの?” というエピソードも満載です。



そして、各問題の解説の後には、それらを受験した有名人、作家や政治家や企業人や芸術家などなど、明らかにできる限りの合否の情報などを付けています。





“へぇ〜” という言葉を連発しながら、一人ではしゃぎながら読んだという稀有な一冊でした(笑)。自分が、なんでこんなにおもしろがるのだろうと考えたら、大げさですが、“時代がつながった感” が起こった気がします。



本当に多くの著名人が受験に苦労し、失敗していた事実も、親近感がわいた一因でしょうかね(笑)。







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