『クジラは食べていい』 小松正之



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今年はアラスカのアンカレッジで、国際捕鯨委員会(IWC)が始まりました。例によって、捕鯨国イジメのようなものが展開されるはずですが、ここ数年は徐々に環境団体のあやしさが知れわたり、日本などの捕鯨国が他国の理解を得つつあったと感じていましたが、今年はまた厳しい状況に追い込まれそうだと報道がありました。





かつては、日本は単にクジラを獲って食べるということだけで、国際的に孤立し、商業捕鯨を止めさせられ、いまだに調査捕鯨しかできなくなってしまいました。日本人が普通に考えれば、同じ哺乳類である牛を何万頭も殺して食べているのが許されて、なぜ鯨は許せないのか理解に苦しみますよね。



しかも捕鯨に強行に反対している英、米もつい一世代前は捕鯨大国で、儲からなくなったからやめただけです。少し前に、ご紹介した衝撃的なノンフィクション大作、『復讐する海ー捕鯨船エセックス号の悲劇ナサニエル・フィルブリック(著) 相原真理子(訳) )』 には、実に情け容赦なく、アメリカがクジラを殺して、油だけをとっていたかが書かれています。





ところが今では、国際捕鯨委員会(IWC)が開かれると、周辺で米・英・豪の国々、グリーピースなどの環境保護団体が過激な運動を展開します。そんな中で孤軍奮闘、外国政府や環境団体と“正論”で渡り合ってきた、当時、農林水産庁の小松氏の胸のすくような主張と実際の活動が描かれているのが本書です。 



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官僚と言えば…、松岡利勝氏が自殺しただけでなく、官製談合システムを発案した緑資源機構の「陰のドン」と呼ばれた山崎進一氏までも自殺してしまいましたので、ますます官僚や官僚出身の政治家には、不信の目が向けられて当然でしょう。そんな農林水産庁の一官僚の本なのです。





この方は、本当にすごいです。官僚はどこの国でも悪人と決め付けられている印象ですが、(あえて否定はしませんが(笑))、小松氏の活動がなかったら今頃、捕鯨船は博物館の展示品だけになったのじゃないかと思われるほどの活躍ぶりです。





以下が目次です。







序章 日本の市場から魚が消えてしまう!?(クジラ過剰保護が生んだ漁業者の嘆き)



第1章
 食糧危機を救えるのはクジラだ(このままでは魚がいなくなる!?;「捕鯨禁止」が生態系を破壊する! ほか)



第2章
 IWCに巣食う魔物たち(捕鯨を葬り去ろうとする反捕鯨国の数の暴力;科学的根拠をねじ曲げるIWC本会議の実態 ほか)



第3章
 反捕鯨「環境団体」の正体(金集めのために宣伝行為をする反捕鯨環境団体;南氷洋調査を妨害するグリーンピースの卑怯なやりくち ほか)



第4章
 捕鯨再開までのカウントダウン(京都会議合意からはじまる日本の捕鯨推進運動;IWC健全化は会議の透明化からはじまる ほか)







環境団体の金の流れや、それに乗って票を集めるためには何でもしようとする政治家連中を描いたり、突然、捕鯨反対にまわってしまった小国が、裏で大国や環境団体からのイジメ(おどし)をうけていたなどの事情を調べ上げ、一歩も引かぬ交渉を展開しています。



そういった態度が徐々にではありますが、捕鯨反対だった諸外国の尊敬や信頼感を生み、本当に少しずつ状況は改善されつつあるそうです。こんなサムライのような官僚ばかりなら日本の未来は明るいと感じる次第です。 





本書は確か、勝谷誠彦氏の著作の中で(書名は失念) 推薦されていたもので、勝谷氏は小松氏のような方こそ、総理大臣になれば良いのだとまで述べていたと記憶しています。その気持ちがよく分かりました。真の国際人とはこういう方じゃないかと思います。



鯨の問題に限らず、日本の外交交渉を考えさせてくれる一冊で、多くの方にお薦めします。





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