『もういちど伝えたい』 たなかひまわり


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「第1回世界で一番泣きたい小説グランプリ」 というのを受賞した作品です。“泣きたい”…、私は泣きませんでしたが、“ぐっ”と感動した一冊です。


めったに現代風の恋愛小説は読まないのですが、すばらしい作品でしたので、ぜひ取り上げたいと思いました。(でも正直、恋愛小説を薦めるのはちょっと照れますね。さっ、勇気を出して(笑)…)


主人公は大学の保育科に通う、紗織とすぐ近くに住む、幼なじみの守。それぞれの家のカギを持っているほど家族同然のつきあいです。この二人の物語ですが、いきなり前半で守が死んでしまいます。


■〜■ ストーリーです



小学校からずっと友だちの二人ですが、大学生になるまでの間、それぞれに付き合っている異性がいたり、いなかったりしていたのですが、それすら遠慮なくからかってしまうほどの関係です。

そんな守が、紗織の誕生日にどういう風の吹きまわしか、自分で描いた絵を持ってきました。徹夜をして描いたらしいのですが、「俺が個展を開く時には返してもらう」などとしばらく、画家になるという将来の夢を語った後、守が出かけます。


守が紗織の自転車で出た後、事情がよく飲み込めないまま、紗織は家に残っていましたが、何とその日、守は交通事故にあって死んでしまいます。

突然、親友を奪われてしまった紗織は茫然自失、友人や知り合いの必死の励ましにもかかわらず、あまりのショックに何もする気が起こらない日々が続きます。

友だちなどに励まされ、やっと少し動けるようになった時、久しぶりにPCを立ち上げると、そこには守からのメッセージ。いったいどういうことなのか…

そこから、死んでしまったはずの守と、残された紗織との本当の交流が始まります。素直になった二人の言葉のやりとりが、心温まります。すぐにでも会えるという守ですが…。





「明日をいい日にするために、今日を体力と気力の限界までやり抜きたいんだよ」と言っていた前途有望な若者が突然事故で死んでしまう。そういう悲惨なできごとをもとに展開するストーリーですが、ハッピーエンドです。


地獄のようなつらい日々を経て、ひとまわり大きくなって立ち直る紗織の姿が感動的です。物語の最後、心の整理を付け、少しずつ自立しようという時、「20歳を越えてもやりたいことが見つからずに情けない」と、自嘲気味に語る紗織に、守と絵を通して交流のあった老人がこういいます。

「まだまだこれからです。私が絵を始めたのは三十八の時でしたから。それでも自分の進むべき道を早くに見つけられたと思ってますよ。一生かかってもいいじゃないですか。いろんなことを少しずつやるのもいいと思います。それが積み重なって深みのある人間となり、また新しいことをする時の土台となるのですから。生きていて成すことすべてに無駄などないと思いますよ」

この暖かい言葉が筆者のメッセージでしょうか。


まるで映画でも見ているかのような、スリリングなストーリーと、印象的な情景描写が臨場感を与えてくれます。どことなく本心を隠したままの二人のネット上の会話が、切ないような、ほほえましいような。


高校生、大学生諸君、こんな恋愛してください、なんてね。
 

 
P.S. ご存知でしたか、著者のたなかひまわり氏。私は不勉強で知らなかったのですが、出版社の方から献本いただき、おもしろくなければ記事にする必要もないとのことでしたので、ありがたく頂戴して読んだ一冊です。

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あ〜はずかしかった(笑)

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『もういちど伝えたい』 たなかひまわり
サイマリンガル:291P:1575円