教育関連ベストセラー100冊


兎の眼 灰谷健次郎.jpg


小説家の灰谷健次郎氏が、お亡くなりになりました。大変残念です。灰谷氏の作品は 入試にもよく出題される ことで、このブログでもご紹介したことがあります。今日は、氏の代表作、“兎の眼” を取り上げます。


“真の教育とは何なのか” と帯に書かれたこの一冊。涙なくして読めない、多くの感動を与えてくれる名著だと思いますが、灰谷氏自身が “欠点の多い作品” とも述べています。書き足りないところがあったのでしょう。


灰谷氏を語る上で、象徴的なできごとは、神戸連続児童殺傷事件で、「フォーカス」が、当時中学3年生であった少年Aの写真を公開したことに対し、出版社に抗議の執筆拒否を宣言したことです。同時に、ご自分の代表作を含む全ての著作権を引き揚げてしまいました。非常に過激な行動ですね。


世間は、あまりに続いた少年事件の残忍さに対し、少年法 を改正し、厳罰化を求めていく流れでしたが、この行動に灰谷氏の思想を見て取れますね。“子どもに甘い” ということで、激しい批判が時として、灰谷氏に浴びせられる要因です。


陳腐な表現ですが、氏にとって、子どもは神聖なもの、あるいは天使と言ったら良いのでしょうか。そして教師はどこまでも、生徒を理解しようと努め、ともに生きていく使命を帯びているというお考えのような感じがします。


本書では、問題児、鉄三のいるクラスの担任となり、孤軍奮闘の新任教師、小谷先生を描きます。結婚したばかりの小谷先生が、戸惑いながら、時に失神するようなできごとに悩みながらも、苦心に苦心を重ね、鉄三の心を開こうとします。

次第に、人生を深く考えはじめ、まるで成長しない夫とどことなくすれ違いも生じてきてしまいますが、一教師として成長していく中で、クラスは一歩一歩確実に成長していきます。


言葉の一つ一つに子どもたちへの温かい眼差しを感じる作品で、単に美化された子どもたちの純粋さを楽観的に描くのではなく、葛藤の中から弱い立場におかれた者への愛情があふれ出てくるところに灰谷氏の豊富な経験を感じます。

表現方法は小学校の中学年程度から読めるように工夫されており、内容的には大人の心も強く突き動かすものがあります。ぜひお読みください。



灰谷氏のご冥福をお祈りいたします。



http://tokkun.net/jump.htm (当教室HPへ)




 子どもは社会の宝です。健やかに育って欲しい。
灰谷さんの作品に救われた先生や生徒も多いはず。
どうか安らかに…。                     

兎の眼灰谷健次郎 
角川書店:339P:600円


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