『若きサムライのために』 三島由紀夫

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192◎年生まれの若輩 ”とおっしゃる tani先輩は 『三島由紀夫全集、全35巻』を、保証人を付けてまでして購入されたそうです。好きなんですねとコメントしたら、違うそうです(笑)。

ご覧下さい。→  tani先輩のブログ 『狸便乱亭ノート


本書の解説で、福田和也氏は、『 石原慎太郎氏とか、江藤淳氏といった自分よりかなり年上の文学者の方たちと、三島由紀夫の話をするたびに、いつも違和感を覚える。違和感という表現は不正確かもしれない。むしろ、陳腐な云い方かもしれないが、「断絶」と云った方がいいだろう。』 とありました。


“今の我々にとって、三島は「切腹した作家」であり、世代によってこれほど一人の人間に対して感じ方の異なる作家はいない” という内容です。福田氏は昭和35年(1960年)生まれです。わたしはその更にその数年下。そして三島は1925年生まれで、今なら80歳くらいですね。


私も恥ずかしながら、大学生くらいまで、三島由紀夫といえば、自衛隊に殴りこんで割腹自殺をした変わり者くらいにしか思っていなかったので、あまり小説を読む気にならなかったのですが、本書はエッセー集で、表紙にもひかれて読んでみました。


“紹介文の一節です”

平和ボケと現状肯定に寝そべる世相を軽蔑し、ニセ文化人の「お茶漬けナショナリズム」を罵り、死を賭す覚悟なき学生運動にゆれる学園を「動物園」と皮肉る、挑発と警世の書。

ただし、全編がこのような激しい内容ではありません。非常に知的に哲学的に「人間性」というものに迫ります。その上で、若い読者を想定しているためか、あえて分かりやすい例をあげたり、げきを飛ばそうと、過激な言葉を用いたりしている印象を受けました。

また、猪木正道氏、後の総理大臣となる、福田赳夫氏(大蔵省で一緒にいたそうです!)、さらに、福田忸存氏との対話もあり、読みやすい一冊です。


もう一ヶ所引用しましょう。

自民党政治を批判して)日本という国は、そうした青年の死の衝動を充足させるものを、全く与えていないんだ。青年にだけじゃない。市民にも与えていない。緑の芝生に赤いお屋根、マイホームのために人間は死なんよ。人間は目に見えるもののためには死なない。人間ってもっとスピリチュアル(精神的)なものだ。


先日、取り上げた、『美と共同体と東大闘争(三島由紀夫VS東大全共闘)』 は、観念的、抽象的すぎる異様な討論で、全共闘の学生は天皇陛下に対し、“醜いじじい” などと語っていたりして、衝撃的であるのと同時に、理解不能だと感じました。


その時の映像 (YouTube) をぜひご覧になっていただきたいのですが、同じ年に出されたこの本で、三島は東大を、“動物園” だと感じていたことを知りました。



とにもかくにも、三島由紀夫は20年以上にわたって、マスコミの寵児であったそうです。私はそれを知らぬ世代ですが、時間さえあれば、(保証人さえいれば) 全集を購入してでも研究してみたい人物の一人です。



http://tokkun.net/jump.htm(当教室HPへ)


P.S. 
さて、それをするには、どうしてもその時代背景を知りたいし、時代を知っている方のお話をうかがいたいのですが、私の父でも、まだ若い(1936年生)。実は、これまた、tani先輩の別宅で、名文 『心に残る思い出や本について』  を見つけてしまいました。

ぜひぜひ、その時代をお読み下さい。感動しました。

  tani先輩の別宅 → 『 PETITES NOUVELLES 』。





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 『若きサムライのために』 三島由紀夫
文藝春秋:276P:500円