母の日

『母』三浦綾子



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今日は母の日。先日ご紹介した 『Girls' Day / Boys' Day』 にもあるように、こどもの日、端午の節句 (桃の節句も) は中国から伝わったものですが、母の日はアメリカから入ってきたものです。





アンナ・ジャービスという女性が、今でいう女性解放運動のようなもののはしりという感じでしょうか。アンナは母 (同じアンナという名前) が思いついたこの運動を生涯をかけて、一家の全財産を投げ打ってまで広げようとしたんです。学校の先生で、今から100年くらい前の話ですが、ものすごい執念です。





志なかばで亡くなってしまった母の遺志を継いで、何とか“母の日(Mothers' Day)” というのを制定しようと、政治的に活動していました。そのひとつとして、自分の教会に来ている人々にカーネーションを500本配ったのが、母の日とカーネーションの由来です。いかにもアメリカ的な感じがします。





私も20年以上も前にお世話になったホームステイした先の “アメリカのMom” に、毎年メッセージ (時にはギフト) を送るのですが、大いに喜んでくれます。現在のアメリカの母の日の習慣は詳しくわかりませんが、私の滞在した家庭では、母の日には、たいてい家族で外食をしています(笑)。(もちろんいなかの実母にも贈りますよ)



女性解放運動というと、最近はまゆをひそめる向きもあるかと思いますが、母を敬う日ということならば、誰も反対しませんし、日本でも、今では母の日が政治活動の一環とはとても考えられません。そもそもそんな日を制定しなくとも、一年中敬っていたと信じたいですね(笑)。端午の節句もそうですが、もとがどうであれ、やはり日本風にアレンジしているのでしょうか。





前置きが長くなってしまいました。さて、本書です。





治安維持法で逮捕、拷問され、ついには30歳で獄中死してしまった作家、小林多喜二の母、セキを、三浦綾子氏が描いたものです。当時セキは90歳くらいで、秋田弁で、こんな感想を漏らします。





わだしは小説を書くことが、あんなにおっかないことだとは思ってもみなかった。あの多喜二が小説書いて殺されるなんて…」 





今では、小林多喜二の名を知っている生徒はほとんどいません。戦前に共産党に入り、反政府運動の旗手のような活動をし、代表作 「蟹工船」 など、確かに分類では “プロレタリア文学”という位置付けにあります。ただひたすら貧しい人を救いたいと願ったもので、政党も宗教も関係ないな感じます。





セキは、若くして小林家に嫁に行き、文字を読むことも書くことも出来なかったのが、ひたすらに多喜二とその兄弟を愛した様子を語り、ついには自分の気持ちを文字につづるというお話なのです。





三浦綾子さんの 『塩狩峠』 を拙ブログで紹介し、大変すばらしい作品だと思いますが、本書が三浦文学の集大成とも呼ばれます。普通の小説の分類でよいのかどうか…。泣けますね、すばらしい作品だと思います。お薦めします。







P.S. 『お母さんありがとう』 とは恥ずかしくてとても言えないね。でもいつもケンカばかりで、お母さんにムッと来たら、本書を読みなさい!と、生徒に言いたくなる一冊です(笑)。また、多喜二の作品は、買ったり、図書館で借りなくても青空文庫でたくさん読めます。







  ⇒ 小林多喜二 『蟹工船』 青空文庫









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